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「風雲鬼」
【ファンタジー 恋愛小説】

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「風雲鬼」〜第二話『ミコの想いと泉の向こう』〜-5

「え、…あんなことって何?」

「……」

ミコは、ついにだんまりを決め込んでしまった。
…というか三雲のこの甲斐性の無さはどうにかならないものだろうか。

「なあミコ、すっげえ気になるんだけど」

「……(プチッ)」


ミコの中で、何かが切れた。
次の瞬間、それは後ろ回し蹴りとなって三雲の背中を捉えていた。
風を切り裂く鋭い音と、ドゴッと強烈で鈍い音がほぼ同時に響き渡った。


「……くはっ…」

苦悶の表情を浮かべる三雲。どうやら踵(かかと)が背中の丁度真ん中に入ったらしい。息も絶え絶えで立っているのがやっとのようだ。


「…もう一回、同じこと言ったらどうなるか……分かるわよね」

ミコは微笑む。が、目が笑っていない。

三雲はその顔を見て一歩後退りした。本能が「逃げろ!!」と訴えていた。
しかし逃げたら、猫に追われる鼠になることは間違いない。なんとか「ははは…」と必死に笑顔を作った。

だが、やっといつものミコに戻ってくれたこと……三雲はそれが嬉しかった。

まだ少し目の赤いミコを横目に見る三雲。今度は、本当の笑顔が自然とこぼれた。

さっきのしつこい質問攻めは、こうなることを全て計算しての行動……だったのかもしれない。

真実は闇の……
いや、雲の中。




-- 数刻後 --


陽が沈み、ただでさえ薄暗い山道がより一層暗くなってきた。そろそろ歩くのも困難になるだろう。

「早く野営地決めないと…」
歩きながらミコが呟いた。
「…野営地って何?」
浅学の三雲が問う。

「野宿する場所のこと」

ふ〜ん、と三雲。

二人とも、昼から休み無しで歩き続けなので、今すぐにでも横になってしまいたいというのが正直な所だ。
だが野宿するには、水辺とかよく周りが見渡せる所とかが適している。

二人はタヌキ達の後を追っていた。
彼らが寝床にしている所なら多分安全だろうし、水も近くにあるんじゃないか。---と、これは三雲の提案である。
幸いタヌキ達が北に歩き出したこともあり、ミコもそれに賛同した。

右も左も無い山道を、タヌキ達に従い進む。
歩く速度は人より少し遅いくらいで、丁度良い感じだ。


それからもうしばらく歩くと、木々の開ける地点が見えてきた。それはまるで、薄光の扉のように見える。
するとタヌキ達が一斉に走り出した。ひょっとすると、そこが彼らの住み処かもしれない。

連れて二人も走り出す。


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