「風雲鬼」〜第二話『ミコの想いと泉の向こう』〜-4
「…はぁ〜〜〜」
なんか、もう……脱力。
私は深〜〜く溜め息を吐きながら三雲の胸にもたれこんだ。
私の涙で少し湿った三雲の胸は、温かくて大きくて、ずっとここにいたいなぁなんて思った。
ここで私は、なぜかスリスリと頬擦りに近い行動をとっていた。どうやら頭も脱力してしまったようで、ぼんやりと本能の赴くままに動いてしまったらしい。
「み、ミコ?」
三雲の焦り混じりの声でようやく我に返る。
「…ご、ごめっ…!」
慌ててパッと立ち上がった。
顔が熱い……
絶対赤くなってる。
私はすぐに三雲に背を向けて、また一気に高鳴り出してきた胸を押さえた。
「も、もう行くわよ! 充分休憩したでしょ!」
苦し紛れに大きな声を出す。
首を傾げながら立ち上がる三雲を横目に、私は早足でその場から距離を取る。
とにかく、まずは落ち着かないと。
後ろで、三雲が叫んだ。
「ミコ! 一人になると盗賊が出るぞ!」
──ビクッ!!
「そう……だった……」
‥‥‥ −‖:
「で、ミコ。さっきのやつ…何て言ったんだ?」
再び歩み始めた旅の道のり。三雲は前を向いたまま、隣のミコに聞いた。
「…教えない」
「なんで?」
「なんでも」
ふ〜ん、と三雲は分かったように何度もうなずく。ミコの仕草から何か察したのだろうか。
「てか、なんで?」
……何も察していなかったらしい。
そのことがよほど気になるのか、ミコの顔を覗きこんだ。
「あんなこと私が二度も口にできるわけないでしょ!」
三雲を強く睨みつけるミコ。言い終えるとすぐにプイッとそっぽを向いてしまった。