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ツバメ
【大人 恋愛小説】

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ツバメI-3

「どうなの?新しい彼」
『え?まあ、普通かな』
「……そう、でも綾瀬さんは絶対にあの彼がお似合いだったなあ」
『……昔、福岡くんにもそんなこと言われたかな』
千川くんは少し微妙な反応したあと、複雑な顔をして言った。
「……きみら二人に関わっている人はみんなそう思ってるのかもね」
『……』

福岡くんや千川くん、芝さんに桜実くん。そして鷹くん。
社会人になって、いろいろな人と関わりを持った。

でも、元はと言えば、あたしは燕と別れたいから彼らと出会った。
だからつまり、えっと…
『もうわけわかんない!』
「……もう酔っちゃった?」
『あ、んーん、考えをまとめようと思うんだけど、全っ然だめ』
「まあ考えなくてもいいんじゃない?」
『それもそうだけど……』
何度考えないようにと思っても、胸にはポッカリと穴があいていた。





事態が急転したのは、その翌日のことだった。

「椿芽」
『あ、どうしたの?』
あたしがいつものように、勤務を終えて会社を出ると、鷹くんが待っていた。
「……会いたくて」
『あはは!なに照れてるの!?可愛いー!』
「……おら、行くぞ」
『あはは!う……ん』
「……」
「……」

あたしたちの前には、燕が立っていたのでした。


『……』
「……」
鷹くんは気付いたらしく、じっと燕を見つめている。
『……鷹くん、行こう』
「……」
あたしが鷹くんの袖を引っ張っても、鷹くんは動かなかった。
「……先に行ってろ」
『でも』
「こいつとは前から話したかった」
鷹くんの真っ直ぐに燕を見据えるその目は、すこし恐かった。
『……うん』



ほんの三十分ほどで再び鷹くんと落ち合った。

あたしは、ふたりが何を話したのか、どんな感じだったのか、全くおしえてもらえなかった。

ただ、鷹くんは“話をつけてきた”とだけあたしに優しく言った。

どんな話をしたんだろう。
でも、なんとなくわかる。
鷹くんはきっと、“俺の女に近寄るな”と言ったのだと思う。

これで、いいんだ。

でも、燕はなにしに来たのだろうか。

深まる謎が、あたしをますます混乱させた。


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