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ツバメ
【大人 恋愛小説】

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ツバメJ-1

『お疲れ様です』
会社を出ると、辺りを見回す。
燕も鷹くんもいない。
一息ついて、駅へと向かう。

「ぎゃああああ!待て!待て渚!落ち着け!!」
「待てるわけないわ!!止まりなさい健吾!!」

目の前を若いカップルのような男女が走り抜けた。
男の子は明らかに涙目で追いかけられてたみたいだけど。
『……誰?』


第十一話
考えもせず走り出す



電車の中からじっと外の景色を眺める。
何か珍しいものがあるわけでもないのに。
『……』
あたしは今、鷹くんとそろそろ付き合おうかと考えている。

彼ならあたしを大切にしてくれるよね。

決めた。




翌日、あたしは鷹くんを呼び出した。
「……なんだよ、めずらしいな」
『あのさ、鷹くんは、まだ気持ちに変化はない?』
さすがにこんなこと言うと照れる。
「……ん」
『だから…その…まだあたしのこと……』
「……そのことか」
『うん』
やばい、なんで鷹くんはこんなに冷静なんだろう。
恥ずかしくて顔も見れない。
「……そのことなんだがな」
『……え』

予想外だった。
彼ならきっと、ぶっきらぼうに“好きだよ”って即答してくれると思った。

「……」
『……』
なんでなにも言わないの…
途端に不安になる。
「考えが変わったんだ」
『……え?』
「いや、別にお前のこと嫌いになったわけじゃねーよ」
『……』
「ちょっと、いろいろ考えたくてな」
『……』
「ちょっと待ってくれ」
はっきり言って、ショックで倒れそうだった。
『……そう』
とだけしか言えなかった。

鷹くんはあたしと付き合ってくれるんじゃなかったの?


帰宅した後も、ずっと理由を考えていた。
何時間も考えて、ひとつの理由に気が付いた。


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