後輩との秘め事…3-1
…やばい。熱あるかも…
真鍋隆(まなべたかし)はそう思った。
頭がふらふらする。
そして悪寒。
…時刻は21時をすぎていた。
明日は土曜で、今日は仕事を頑張ってやり残さず…というつもりだったし、それにあの人が残業しているから。
だけど…
「…無理」
真鍋は一言つぶやく。
「どうしたの?」
松本梨絵(まつもとりえ)はその一言を聞き漏らさなかった。
「…体調悪そう」
「大丈夫です…」
「なら無理なんて言わないわよ」
あたしは近寄って真鍋の額に手を当てる。
クーラーがきいているのに、少し汗ばんで熱い額。
「…熱あると思うけど。送るわよ?」
「大丈夫です…」
「馬鹿言わないの」
あたしは自分の荷物を急いで整理して真鍋を引っ張る。
「ほら、歩ける?」
ふらついている足。
それを見てあたしは更に真鍋の手を引っ張った。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
「失礼します…」
この部屋に入るのは2度目だ。
あたしは真鍋をベッドに座らせて、寝かせる前にスーツのボタンを外す。
「すみません…」
「気にしなくていいから」
スーツを脱がせるとシャツは汗で濡れている。
「シャツ脱がせるわよ」
はぁはぁと荒い呼吸をしながらあたしを見る姿は2人で交わっているときのよう。
…あたしは真鍋のどこを見てたんだろう。
気持ちをぶつけるだけじゃなかったはず。
あたしが残って仕事をしているとき、真鍋は必ずいた。
あたしが仕事を手伝う時だってあったけど一生懸命やりとげて。
こんなに疲れるまで…
そう思いながらシャツを脱がせ、汗を吸ったタンクトップを脱がせる。
「タオルこれ使っていい?体拭くけどかまわない?」
ゆっくりと肯く真鍋。
「今日ずっと体調悪かったの?」
あたしは体を拭きながら真鍋に聞いた。
「昼くらいからですかね…」
「もう。
…あんまり無理したらだめだからね?」
がっしりした体つき。
綺麗な背筋と腹筋。
「…こんなことしてていいんですか?」
「明日土曜だし、別にいいの。
後輩が変な心配しなくても大丈夫」
「だって…俺何するか」
「バカ。着替えはこれでいいの?」
と近くにたたんで置いてあったTシャツを差し出す。
「ありがとうございます…」
「ちゃんと寝るのよ?」
あたしが…真鍋にこうするのは何でかわかってる?
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
「あれ…?」
目を覚ました時、部屋の中は豆電球だけがついていた。
ああ…俺熱出して松本さんにここまで送ってもらったんだ。
クーラーでひんやりとしている部屋だけど俺のTシャツは汗で濡れていた。
枕元には、腕に顔を伏せて寝ている松本さん。
ずっといてくれたのか…
俺はシャワーを浴びようと起き上がり、部屋を出ようとする。