刃に心
《第24話・忍者探偵忍足疾風の事件簿〜お調子者を殺したのは誰か?
次々と明らかになる友の暗い心。
まさか犯人はこの中にいるのか?
果たして疾風は友を疑えるのか?
『湯煙温泉彼方殺人、
尚、今回のタイトルは本編と一切関係ありません事件』》-7
「すまん、すまん!9時にまだ時間あるな、と思て、ちょこっとゲームしたら、いつの間にか10時やったわ!」
呆気にとられる一同のことなど完全に無視して、七之丞が笑いながら、運転席から降りてくる。
しかも、バス同様何処で調達したのか、その服装はバス運転手。無論、白手袋と帽子付き。
「ん?どないしたん?あぁ、自己紹介がまだやったな。
わいは神足七之丞。そこの疾風の従兄や、知ってる奴は知ってる、知らへん奴はちゃんと覚えとき。
趣味はネットとゲーム、今年で21歳、B型の大学生、好きな女の子のタイプは…」
───ヒュンッ!
「おっと!!」
突然飛んできた小石を七之丞はその長い足ではたき落とした。
小石が飛んできた方向を見れば、疾風が不機嫌な顔で睨んでいる。
「あ、そのな疾風、すまんかったて。でもな、バスは遅れるもんやろ?」
「遅れたのもそうだけど、何なんだよコレは!」
「何て、バスに決まとるやないか。何や自分、バスも知らんのかいな?あぁ、これやからゆとり教育世代は…」
「そんなベタなボケはいいんだよ!俺は何処から持ってきたんだって聞いてるんだ!」
「ああ。コレはな、わいの知り合いに気前のええ奴がおってなァ!
ちょいと昔話をしたら泣いて横流ししてくれたんや♪」
にや〜っとした黒い笑み。
疾風は怒る気も失せたのか、疲れたように肩を落とした。
「ホンマならな、可愛ええ垂れ目のバスガイドと、ゴツくて三白眼のボディーガードも付けよか、て思たんやけど、二人ともこの休みはいちゃつくのに手一杯らしくてなァ」
七之丞は未だポカンとした顔の面々に向けて言った。
「何はともあれ、そろそろ出発するでェ」
◇◆◇◆◇◆◇
バスは今、市街地を抜けて、うねる山道を走っている。
車が車だけに車内は遠足ムードが漂っていた。
「………」
「そんな顔をするな。物凄く遅れたわけではないのだから」
まだ多少不機嫌な疾風をその隣に座った楓が宥める。
この席は熾烈なジャンケンを制して楓が勝ち取ったものであった。
「そうッスよ、疾風先輩。これでも食べて機嫌直すッス」
前の席の眞燈瑠が身を乗り出して、プリ○ツを差し出す。
(まあ、いつまでも怒っていても仕方ないか)
この和やかムードを壊すわけにもいかないし、第一、七之丞本人は疾風の怒りなどちっとも気にしないだろう。
そう思って眞燈瑠からプリ○ツを一本受け取った。
「疾風、こいつもやるよ!」
負けじと後ろの席から千夜子がポ○キーを差し出す。