投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

ツバメ
【大人 恋愛小説】

ツバメの最初へ ツバメ 33 ツバメ 35 ツバメの最後へ

ツバメH-4

「なに?真面目な話って」
「……椿芽ちゃんと別れろよ」
桜実と燕は学校の非常階段で向き合っていた。
しんと静まり返り、時折、風が鉄の壁にあたる重い音しかしない。
「……またそれ?この間も言ってたよね」
「……お前が椿芽ちゃんをを大切にしないなら、俺が付き合う」
「……なんで?」
「好きだからだ」
「……」
「あんなにいい子なのに、お前はなんでそうなんだよ」
「桜実には関係な……」
「ある!」
燕の言葉を桜実は制す。
「……俺、椿芽ちゃんに告ったから」
「……」
「お前がいらないなら、俺が大切にする」
「……やっぱ、俺じゃ、だめなのかなー」
燕はストンと床に座り込む。
「……もう見てらんねえんだよ」
桜実の声は震えていた。
「……」





「急に呼び出してごめん」
『……なに?』
「久し振りだね」
『……うん』
燕は椿芽を呼び出していた。
「……最近、なにかあった?」
『……別に』
「ん、例えば、告られたり告られたり告られたり」
燕は指折りして言う。
『……聞いたんだ』
「……椿芽もそう思ってる?」
『なにが?』
「俺じゃ椿芽を幸せにできないって」
『……』

ごめん、燕。

『……うん』
「……」

『……』
燕は目を見開き、ひどく悲しそうな顔をした。
「そっか、じゃあ……また」
『……』
あたしは返事をしなかった。
少しして、燕はふらっと歩きだした。


去っていく燕の背中を見ながら、あたしは何度も呟いた。

『……さよなら』

『燕、さよなら……』


ツバメの最初へ ツバメ 33 ツバメ 35 ツバメの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前