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ツバメ
【大人 恋愛小説】

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ツバメI-1

あれから、もう一年。


もちろん、あたしと燕は別れたまま。

桜実くんからはあれから連絡なし。
会ってもいません。



そんなあたしは今、なんとあの狩羽鷹とうまくいってます。


第十話
すれ違い続ける




『待ってよ!』
「……ほら、荷物」
『ありがと』

とは言っても、まだ付き合ってはいません。
ゆっくりゆっくり、仲良くなって、今に至ります。

でもまあ彼は“早く付き合えよ”が最早、口癖になりつつあります。

彼はクールだけど、やっぱり優しくて、正直もうそろそろ付き合ってもいいかなって思っています。

燕?

今なにしてるんだろうね。

燕もあれ以来。

もうあいつのこと、少しずつ忘れ始めてる。
いいことなのか、そうでないのかはよくわからない。
でもあいつは、きっと合コンも楽しんでるだろうし、彼女だってできてるよ。

あいつを解放してよかったのかもしれない。


別れる前までは、解放していいのか悪いのか疑問に思っていた。
でも今では本当にそう思ってる。





「なあ、燕」
「なに?」
いつからか、二人の溜まり場はこの非常階段となっていた。
「……俺さ、あれから一度も連絡とってないんだぜ」
「……誰と?」
「……椿芽ちゃん」
「……へえー、とっくに付き合ってるんだとばっかり」
「すごい皮肉たっぷりだな」
「……そんな話、興味ないね」
二人は同時にタバコに火をつけた。
「まあ聞けよ」
「……ふぅー」
燕はしゃがんで煙を吐く。
「お前はもういいのか?」
「いいもなにも、もう別れてんじゃん」
「でもお前、あれから一年も経つのに彼女どころか合コンだってしてないんだろ?」
「なんで知ってんだよ」
「……椿芽ちゃんに未練があるからやめたんだろ?」
「……あのな、お前がおしえてくれたんじゃん、俺じゃだめなんだって」
「……」
「じゃあ先行く」
椿芽はほとんど吸っていないタバコを、ギュッと強くドラムカンに押し付けて非常階段を出ていった。


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