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絶世の美女は災厄の女神
【ファンタジー その他小説】

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絶世の美女は災厄の女神-6

「風の精霊シルフよ…… え〜とぉ後何だっけかなぁ…… ああ〜そうそう! なんじ聖なる衣持て我一陣の守りの風と成らんことを…… 畏み畏みそうろう…… じゃぁなくてぇ! ……そう言えば法術なんてここしばらく使ったことがなかったわねぇ。確か最後に使ったのは1000年ぐらい前だったかしら? 呪文……忘れちゃったなぁ」
 そんな事を漏らして言ったりもする。
 と、その時である。
”ボーーンッ!”と、またしても飛んできた火の玉が家の脇に有る納屋に当り、激しく火柱を上げていた。
 それを見てリア。
「ぬぐわぁーーー! なんて事してくさんねん! こんガキャーー!!」
 怒り心頭、頭を抱えながら仰け反って叫び出す。
 最早対岸の火事などとは言っては居られない。リアは慌てて家の外に有る井戸端へと駆け寄ると、桶一杯に水を汲み、それを抱えて来て納屋を燃やしている炎へと、その水を掛け捲くる。
 数回は往復しただろか、初期消火の甲斐も有り、大した大火事にも成らずに火は消えたものの。
”ズガーーーーーーンッ!”
 すると今度は物凄い勢いでもって、飛んできた大砲の玉がリアの家の窓ガラスを突き破って家の中に入り込み、爆発を起こしたからさあ大変!。途端にリアの家は炎に包まれていた。
「○△□×ーーーー!!」
 これにはリアも腰を抜かした様子である。地べたに尻餅を付いたまま、綺麗な髪を逆立てて、意味不明な奇声を上げ、怒り捲くる。
「たくっ! 未開の原住民どもがっ、舐めてんじゃないわよ! いったい誰に向って喧嘩をふっかけてると思っているのよ! わたしを怒らせたらどうなるか、眼にもの見せてやるわっ!!」
 己の蒔いた種とは言え、財産とも言える家を焼かれては黙って見ているだけ…… なんて大人しい性格などでは無いリアキナモーカナである。火災保険など当然無いこの世界、想定外の損失にどうやら逆ギレしたらしい。切れ長の綺麗な眉を吊り上げて、喚(わめ)き散らすもつかの間。何を思ったか血相を変えて燃え盛る火の海となった我が家へと駆け込んで行くと、直ぐに、何やら煎餅でも入っていそうなブリキの箱を抱えて慌てて外へと飛び出して来たではないか。そしてホッと一息ついたりもする。
 一体、それほどまでに大切な物だったのか? その箱を持ち出すのに必死だったらしく自慢の綺麗な金髪も焼け焦げてチリチリに成り、着ている洋服も煤けて真っ黒だったりもする。
 それでもリアは、煤けた顔を手で拭い祓と、般若のように怒った顔のままブリキ箱の蓋を開け。
「徒競走の優勝者を出さない為の妨害工作用にと作って置いたこれを、こんな形で使う事に成るとはね!」
 そう言いながら、なにやら箱の中に綺麗に並んだキャンディー…… では無く、幾つもある押しボタンのようなスイッチの一つを指で押し、悔しそうにかみ締めていた口元を、裂けんばかりにニンマリとさせるのだった。
 すると。
 突然! 燃え盛っていた自宅の屋根が吹き飛んだかと思いきや、天井を突き破って太い鉄パイプの様な物が幾つも並んだ大きな機械が、せり上がって出て来たではないか。
 リアはそんな機械の動作を確認すると。
「こちとら伊達に3000年も生きてやしないんだからねっ! あたしを怒らせたらどうなるか見せてやるわっ!」
 などと叫びながら、今度はブリキ箱の中に並ぶ赤い色のスイッチを、端から順に押して行く。
 それと同時であっただろう。大きな爆発音と共に、並んだ鉄パイプの中から一斉に何かが勢い良く飛び出すと、リアを奪い合い、争って居る者どもの居る大草原目掛けて、飛んで行ったではないか。
 リアはそれらを見送りながら。
「こん畜生どもー! ざまー見やがれーー!!」
 そんな事を叫びながら、最早こんなブリキ箱は用済みとばかりに、それを地面に叩きつけ。左手を腰に当て、右腕をグルグル振り回しながら、カーカッカッカァ!! と息が切れるほどに高笑いをしていた。


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