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絶世の美女は災厄の女神
【ファンタジー その他小説】

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絶世の美女は災厄の女神-7

 一方こちらでは。
「ええーい! 小賢(こざか)しいトカゲ達(ども)めがっ! 落ちるがいいっ!!」
 撃って撃って撃ちまくる。貴族の男は飛行船に積んできた有りっ丈の大砲を撃(ぶ)ちかまして、竜騎士団を攻撃していた。
 そして。
「怯むなー! 行けー! 勝利は我に有りーー!!」
 などと、いつから竜騎士団のリーダーに成ったやら、小さい飛竜に乗った騎士もまた、レオフォールドの竜騎士達を煽りながら、勇猛果敢に飛行船バルルーン目掛けて体当たりを繰り返すのだった。
 その時である。
「なっ! なんだあれはっ!!」
 突然飛来した幾つ物の、炎の塊に誰もが驚きの声を上げた。
 どうやらそれは、先の尖った細長い筒に、幾つもの小さな羽のような物が付いた物だった。各々がお尻から火を噴出して、ドラゴンの何十倍ものスピードでもって迫って来る。そしてそのまま戦っていた竜騎兵達を追い越して、何処へとも無く去って行く。
 だがしかし。
 そんな炎の矢の一つが飛行船バルルーンに命中して突き刺さると、その勢いもあってか、バルルーンは真っ二つになって大爆発を起こし、大草原目掛けて墜落した。
「ばっばかなーー! 我が無敵のバルルーンを一撃でもって粉砕するとはっ! これはいったい!!」
 爆発して吹き飛んだ飛行船の破片にしがみ付き、貴族の男『バルザック』もまた、真っ逆さまに、眼下の草原目指して落っこちて行った。
「そっ総員退避ーー! ぐわぁーーー!!」
 爆発に巻き込まれた竜騎士達も半分以上が墜落。小さな飛竜なんぞは、爆風でもって尻尾に火が付いた途端、主である若い騎士を振り落として、物凄い勢いでもって何処かへ飛んで行ってしまった。
「くわーー! たっ助けてくれーー! リア殿ぉーーー!!」
 かくして若い騎士もまた、真っ逆さま! 彼の下心丸出しな野望も此処に潰(つい)えたのであった。

 
 同じくして、草原でもって大格闘大会を繰り広げていた人々は。突然頭上より落ちてきた火の雨に恐れ慄(おのの)くと、最早リアキナモーカナを巡って争って居る場合などでは無いと、爆撃を食らって逃げ惑うが如く、全ての人が蜘蛛の子を散らさん勢いで持って逃げだしていた。


 被害はそればかりではなかった。
 リアの家より打ち出された幾つ物の炎の矢は、草原を飛び越えてやがてはその後方に広がる山の斜面目掛けて落ちて行く。
 すると。
「進めー! 殺せー! レオフォールドを叩きのめせぇーー!!」
 と、今まさに山裾を雪崩のごとく押し寄せて来たゴルドバ軍の大軍勢に突き刺さるや、大爆発と共にこれを意図も簡単に薙ぎ祓っていた。
「ばっバカなぁっ! これほどの大軍勢を一瞬にして殲滅できる程の武器を作れる者が、この国には居ると言うのかっ! グハァーーー!!」
「大将殿ーーーーっ!!」
 ゴルドバ軍、成すすべ無し。彼らの野望もまた、潰えたのである。


 そんな光景を燃え盛る我が家をバックに、リアはクシャクシャになった髪の毛を掻き揚げながら、大きな双眼鏡でもって眺めていた。
「あっちゃぁー! ちょいと飛び過ぎたかしらねぇ。ほとんど向かい側の山に突き刺さっちゃったわぁ」
 口惜しげにそう言いいながら、一頻り地団駄を踏む彼女。
「やっぱり飛行爆弾ってのは、自動で相手を追いかかる様に作らないと駄目ね」
 なにやら怪しげな微笑みを浮かべながら、そんな事を呟いたりもしていた。


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