シスコン『第九章』-1
文化祭も終わり、その後のテストも順調に終わった。風が冷たくなってきた。
もう、十二月だ。
シスコン『第九章』
「寒いな。」
「あぁ、寒いな。」
秋冬は外にいた。上下ジャージを着ている。隣りには同じ格好の澄もいる。
そう、体育の時間だ。
「冬に長距離走っておかしいよな。」
澄は体を擦りながら言った。秋冬はジャージのズボンのポケットに手を突っ込んでいる。
「おかしいとは思うが、仕方ないだろ。」
「だなぁ…。」
二人は同時に舌打ちをした。
「はい三分〜!!」
千里は今走っている。秋冬と澄はその後走る。
「千里は速いな。」
千里は前から三番目だ。まだ余裕もありそう。
「ほんとだるいわ。帰りてぇ。」
澄のぼやきを聞いて秋冬は笑った。
「はい宗宮ラスト一周!!!三分五十五!!五分切れるぞ!!」
教師の声がグラウンドに響く。
「やっぱあいつすげぇな。」
秋冬が言った。
「バスケ部一年で一番速いからな。」
秋冬は口笛を吹いた。
「それよりも四世弟、優魅ちゃんとはどうなのよ?」
澄が靴紐を結び直しながら言った。
「普通だよ、普通。」
「お前の普通がわかんないんだよなぁ。」
秋冬は澄を横からチョコンと蹴った。澄は転んだ。
「お前の思う普通が、オレの普通だ。」
秋冬は笑った。澄は立ち上がる。
「負けたらジュース奢りな。」
「負けるに決まってんだろ。やるけどよ。」
澄が笑う。
「意外だな。断ると思ってた。」
秋冬は靴をトントンと、爪先を地面に当てた。
「ただ走るだけじゃ、つまらねぇだろ。」
「いひひっ!違いねぇ!」
昼休み
「ほれ、ジュース。」
秋冬は澄にジュースを渡した。
「マジ勝った気しなかったけどな。」
澄は苦笑しながら受け取った。
「お前後ろからのプレッシャーがハンパねぇんだよ。」
秋冬がイスに座る。澄はイスごと回れ右をして、秋冬の机の上に弁当を置いた。
「普通に走ったつもりだけどな。」
「それで五分十二秒はすげぇよな。運動してねぇのにな、お前。」
秋冬は弁当を開ける。この弁当は朝、秋冬が優魅からもらった手作り弁当だ。
「1500mくらい走れる。」
澄が舌打ちした。
「かっこいいっすねぇー。」
秋冬は弁当を食べる。定番のからあげを味わい、秋冬は顔をほころばせた。
「うまいのか?」
「あぁ。」
「けっ。」
秋冬は澄を見る。
「やっぱ…お前…、」
「どう?おいしい?」
そこに、優魅がきた。
「うん、うまいよ。」
秋冬は微笑む。
「よかったぁ…。」
澄が優魅を見た。その様子を、秋冬はじっと見ていた。