シスコン『第九章』-7
「オレの意思で…終われない?」
「あぁ。オレは五本も連続で外さねぇし、お前は五本も連続で入れられねぇよ。」
澄はボールを乱暴に掴んだ。
「見てろ。」
シュッ……スパッ
「三本連続だ。あと二本…だろ?」
秋冬は微笑む。
「お前、ほんとのプレッシャー知らねぇだろ…?」
秋冬は構えた。
「…もう、外さねぇよ…?」
シュッ……パスッ
「っ!?」
澄はリングを通って床を跳ねるボールを見つめていた。
「あと二本入れたら勝ちな。お前の勝ち条件は、まだ遠いな?」
澄は悔やんだ。ルール設定を誤ったのだ。
「お前はオレをナメすぎたんだよ。」
澄はボールを持つ。少し、手が震えている。
「あと二本で、勝ちなんだ…!」
「四本目。」
「くっ…!」
澄はボールを構えた。
シュッ…ガッ…パスッ
ボールはリングをくるっと回り、入った。
「は…、」
弱々しく澄は息を吐いた。
「あと…一本…!」
澄の心臓はバクバクいっていた。負けられない勝負だからこそ、プレッシャーが尋常じゃない。
ましてや、自分の土俵に、自分から引きずり込んだのだから。
「四本目。」
秋冬はあくまで冷静に、ボールを投げた。
パスッ
「オレも、あと一本な。」
「秋冬君…!!」
優魅は走っていた。もう学校の光は見えていた。あとは、校門を通り体育館を目指すだけ。それが何故こんなにも遠いのか。
梓から電話をもらった。内容は、秋冬と澄が勝負をしているという事だった。
そう、自分の為に。
不毛だと、優魅は思った。
自分は、秋冬に気持ちを押しつけていただけかもしれないのに。
秋冬に辛い思いをさせているのだろうか…?
体育館は、すぐそこだ。
「秋冬君!!!作山君!!!」
梓が体育館に入った。無駄に広い、通常の四倍もある体育館。
その端っこのコートに、二人は立っていた。リングの下にはいくつものボール。二人の近くにはバスケットボールのカゴがあった。
今、澄がボールを投げようとしている。