シスコン『第九章』-2
「優魅ちゃん、オレにも弁当ちょーだい?」
「えぇ〜?どうしよっかなぁ〜?」
二人は笑っている。
「嘘だって。優魅ちゃんのラブラブ弁当は、四世弟だけのもんだもんなぁ?」
優魅は顔を真っ赤にした。
「いひひっ!恥ずかしがんなって!ひゃははっ!」
澄は大笑いする。優魅が澄の背中をパシッと叩いた。
「もうっ!」
澄はまだ笑っている。
「そういえば、今日千里君は?」
優魅が周りを見て言った。いつもは二人と一緒に一つの机で窮屈そうに食べているのに、見当たらなかった。
「さぁ…そういや…いないな。」
「オレはてっきり便所に行ったのかと。」
秋冬が携帯電話を開いた。
「メールもねぇなぁ。作山のケータイは?」
「ないねぇ。ま、いいんじゃね?千里ちゃんにも用事はあるさ。」
秋冬は、だな、と返事をして、優魅を座らせる為にイスを引いた。
「ありがとっ。」
優魅は座る。澄がニヤッとしたのを見て、秋冬は頭を叩いた。
「何をニヤニヤと。」
「別にぃ?」
優魅は首を傾げた。
そのとき千里は、階段の踊り場にいた。
「用事ってなに?」
「いや、君にいい情報がありまして。」
千里は舌打ちをする。
「なに?正直言って僕、キミのことあんまり好きじゃないんだけど。」
「それはそれは。」
千里は差し出された紙を受け取った。そして、見て驚いた。
「…これ、どこで?」
「約三か月前の早朝、掲示板に貼られていたものです。」
千里は紙をグシャッと雑に丸めた。
「この事は…、」
千里は舌打ちをした。
「この事は僕と北川先輩しか知らないはずだ…!」
「誰かに喋ったりしてないかい?」
「えっ…?」
千里は少し考え、否定した。
「それはありえない。意味がない。」
「どうかな…彼も何か企んで…、」
「いい加減にしろ。」
千里の声色が、明らかに変わった。
「秋冬君がそんな事するわけないだろ。」
「四世秋冬を信じてるんですか?」
「当たり前だろ!?だいたい九月の掲示板のやつも、お前がやったんじゃないのか!?そんな事して楽しいか白鳥!?」
白鳥は笑った。
「楽しいですよ。とても。」
この言葉が、千里の逆鱗に触れた。
「この……!!!」
千里が白鳥の胸倉を掴んだ。
「千里君!!」
階段を駆け上がってきたのは、梓だ。梓は二人を引きはがす。
「どうしたの!?」
千里は梓を見て、目をそらした。
「っ…、なんでもない。」
白鳥は微笑む。
「秘密主義も程々に…。」
「白鳥っ!!!」
白鳥は階段を上がっていった。
「くそっ!!!」
千里は壁を殴った。
梓は困惑する。
「秘密主義って…?」
千里は梓を見ないようにした。
「たいした事じゃないよ。」
千里は笑った。だが、梓には笑顔に見えなかった。