Happy Birthday-4
―貴之3歳。
幼稚園の入園式。
たくさんの人に驚いて、泣き出してしまった。
これからお友達と仲良く遊べるか少し心配…。―
窓から見える夕陽を、ただ2人で黙ってみていた。
キレイだ…。
こんな風にゆっくり夕陽を見たのは、久しぶりだ。
なんだか安心する。
僕はこの家で、1歳までを過ごしたんだ。
懐かしい感じがするのは、気のせいかな??
…突然、『母さん』が苦しみだした。
初めは、顔をしかめるだけだったけど、今は座ってるのも辛そうだ。
「どうしたの!?大丈夫??」
僕は何も出来ずに、『母さん』の周りをウロウロするばかり…。
しばらくすると、少し楽になったのか僕に微笑み返してくれた。
「大丈夫…。もうすぐ赤ちゃんが産まれるみたい。」
慌ててカレンダーを見る。
'11月14日'。
『僕』の誕生日だ。
『母さん』は、今日『僕』を産むんだ。
自分の産まれるところを見るなんて、すごく不思議な感じ。
「うっ……。」
『母さん』がまた苦しみだした。
おでこに冷や汗が浮かんでる。
すっごく苦しそうだ。
どうしたらいいかわからない。
「病院…。」
気づいたらそうつぶやいていた。
自分の声で、我に返った。
「そうだ!!病院だよ!!救急車!!」
僕はまたパニックになりそうなのを堪えて、『母さん』の手伝いをすることにした。
でも、ドキドキしちゃって、うまく動けない。
苦しいはずの『母さん』の方が、落ち着いてるみたいだ。
「まだ大丈夫。貴之くん、隣の部屋にある鞄を持ってきてくれる??」
鞄の中には、病院に行くときに必要な物が全部入ってるという。
いつ産まれるかわからないのに、準備してあったんだ。
『僕』が産まれるのを、それほど待っていてくれてたってこと??
今じゃ、怒ってばっかりなのに…。
『母さん』が苦しそうにする時間の間隔が、だんだん短くなってきた。
「貴之くんがいてくれて良かった。」
いきなりそんなこと言うから、僕は泣きそうになった。
どうしたんだろう??
何だか、泣き虫になったみたいだ。
それとも、『母さん』の不安が僕に伝わってきているのだろうか??
「1人じゃ、心細かったと思うから…。」
苦しいはずなのに、僕を安心させようとしてか、無理に笑顔を作っているように見える。
やっぱり『母さん』なんだ。
だって僕が知ってる母さんも、我慢強かったもん。