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Happy Birthday
【家族 その他小説】

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Happy Birthday-3

―貴之2歳。
『ママ』『パパ』『ワンワン』…等、言葉を話すようになった。
会話にはまだならないけど、案外お喋りなのか??―


「落ち着いた??」
さっきの女の人が、ジュースを運んできてくれた。
あの後、大泣きしている僕をこの人は見捨てずに、泣き止むまでずっとそばで待っていてくれた。
そして落ち着いた僕を、「近くだから…」と家に連れてきてくれたんだ。
この人が誰だかわからないけど、そばにいると、すごく安心する。
母さんに似ているからかな??
「はい…。ありがとうございます。」
今になって、恥ずかしくなってきたぞ。
僕、この人の前で泣いちゃったんだよな。
どう思ってるんだろう??
やっぱり、男が泣くなんてカッコ悪いって、思ってるんだろうか??
恥ずかしさを紛らわすため、部屋の中を見回してみる。
隣の部屋に、ベビーベッドがある。
そういえば、この人のお腹大きいみたいだ。
ベッドの他にも、赤ちゃんの為の物がこの家にはいっぱいある。
おもちゃに、服に、オムツ…。
赤ちゃんが産まれてくるのを、楽しみにしてるのが伝わってくる。
「あの…。赤ちゃんいつ産まれるんですか??」
…バカ。
僕はいきなり何を聞いてるんだ!?
それよりも、聞かなきゃいけないことはたくさんあるのに。
「あぁ、…もうすぐ。」
お腹を撫でながら、赤ちゃんに話しかけるみたいに、その人は話し始めた。
「本当は、もう産まれてきてもいいんだけどね。ちょっとお寝坊さんなのよね〜。早く出てきていいのよ。」
優しそうだ…なんて、ボーっと見ていたら、急に顔を上げるから目が合ってしまった。
なぜかドキドキして、慌てて目をそらす。
「あっ、知ってる??この子が産まれて1歳になる頃に、さっきいた河原の近くにマンションが建つんだって。」
……!!
河原にマンションだって!?
それって僕の家のこと??
でも赤ちゃんが1歳になる頃って…どういうことだ??
「私ねぇ、あの河原の景色がすごく好き。マンションが建つって聞いたときから、『絶対にそこに住む』って決めてたの。」
あっ…。
前に母さんも同じことを言ってた。
『このマンションからの景色が大好きで、貴司がお腹にいるころからここに住むって決めてたのよ』って…。
どうしてこの人、母さんと同じことを…??
「どうかした??」
不思議そうに覗き込む顔が、母さんの顔と重なって見える。
そうか…この人は母さんに似てるんじゃなくて、僕の母さんなんだ。
そしてきっと、お腹の中にいるのが僕…。
どうしてかはわからないけど、僕は今、昔の母さんに会ってる。
僕が『過去に戻った』ってこと!?
だからマンションがなかったんだ。
あのマンションは、僕が産まれてから建ったって言ってたし。

不思議と、『どうしよう』という気持ちにはならなかった。
『あぁ、何だ。そういうことか…』なんて、妙に納得した気分になる。
元に戻れるか、戻れないかもわからないのに。
それどころかこっちの『母さん』と、もう少し一緒にいたいなんて思う。


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