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レン
【二次創作 官能小説】

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レン-42

玲良とアゲハの心が交わる事はないだろう。
アゲハは男の存在自体を拒絶する。それは女は男に叶わないという、思い込みによる負い目からなのだと俺は考えていた。
だが玲良は自らが女である事に負い目は感じていない。女だという理由から与えられる不条理な差別にはコンプレックスを感じていても、それを負い目としては考えないだろう。
むしろ女に産まれた事を最大限に利用しながらも、自らが男達の中でも正当に評価される事を望んでいるように思える。
〈フール、アゲハ。司法取引を受け入れなさい。密売組織と密造地の全容を話せば、あなた達は刑事訴追を免れられるかも知れない。さもなければ―。〉

必死に走る足元に揺れを感じた。いよいよ強襲は最終段階を迎えたようだ。建物内に逃げ込んだ衛兵達への攻撃が始まったのだ。
玲良の存在が広間付近に確認された事で、それ以外への攻撃を避ける理由はなくなった。
〈さもなければ?〉
建物の振動音と共にフールの冷めた声が響く。
〈あなた達を逮捕するわ。〉
〈フザケやかって…!〉
次の瞬間、銃声が響いた。

―玲良!!無事でいてくれっ!―

俺は広間のドアを蹴り開けた。
そして人影の無い広間の奥の、社長室と思われるドアへと飛込んだ。
その瞬間、俺の目に映ったのは広い部屋の中央に立ち銃を構えるフール、その隣に立つアゲハ、その後ろの4人の男、血まみれのベッドに横たわる老人、そしてベッドに腕をかけて倒れ込む玲良の姿だった。玲良は肩に銃弾を受けたようだ。
俺は直ぐ様フールに狙いを定め、Vrの引金を引いた。
銃弾はフールの腹部に命中した。
その瞬間、これまでとは比べ物にならない激しい衝撃が建物を揺らし、建物の崩壊が始まった。
その揺れに不安を覚えたのだろうか、銃弾によって意識を失ったフールを抱え、男達が後方に向かって歩き出す。後方には俺の飛込んだドアとは、別のドアがある。
「蓮、動くな。少しでも動けば、レイラを撃つよ。」
フールの銃を手にしたアゲハが言った。
『行きたいなら行け。俺は玲良を置いてお前達を追う事はしない。』
アゲハは俺の言葉にフッと鼻で笑った。
「裏切られてたくせに。真実を知ったら、あんたはもうあの女を愛せなくなるよ。」
アゲハは本当の真実を知らない。欺いたのは彼女ではなく、俺なのだ。

アゲハ達がドアに消えると、俺は直ぐに玲良の元へ駆け寄った。
『玲良!!玲良っ!!』
撃たれた肩を見ると銃弾は貫通し、主要な動脈の位置は外れているようだ。命に関わる様な傷ではないことに、俺は胸を撫で下ろした。
彼女の横の社長の頬は血でまみれ、額にはくっきりと銃で撃ち抜かれた跡があった。
自由に動かす事も叶わなかった体のせいか、抵抗の跡もない。

俺はそっと彼女を抱きしめた。ダークブルーのシャツが、彼女の流した血で赤く染まる。
彼女の顔を覗き込むと彼女の唇が微かに震え、何かを伝えようとしているようだった。
ささやくような小声だったが、俺はその言葉を聞き取った。
「……ヴァイオレット………。」
それは強襲の際、セーフカラーの確認が不可能になった場合の合言葉だった。

―大丈夫、セーフカラーの青いスカーフは見えてるよ。それに俺が君を間違える訳がない。―

「玲良。」
俺は静かに彼女の呼んだ。だが彼女は合言葉を伝え、意識を手放したようだ。
彼女を外に運びだそうとそっと抱き上げた。


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