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特進クラスの期末考査 『淫らな実験をレポートせよ』
【学園物 官能小説】

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特進クラスの期末考査 『淫らな実験をレポートせよ』act.5-6

それを初めて目撃したのは、瀬田が初めて弥生のアパートに泊まった夜だった。
その頃には身体の関係にも慣れてきていて、一緒に寄り添う事がとても重要だと思っていた時期だった。

初めてご馳走になった弥生の夕飯は冷やし中華だった。
「何も用意してなかったから、ごめんね?」
と言った割りには、弥生の冷やし中華はとても豪華そうに見えた。
トマト、キュウリ、ハム、金糸玉子、レタス、紅生姜、白ごま。彩り鮮やかで瀬田の食欲をそそった。
「かける?」
と差し出されたマヨネーズに幾分困惑したが、弥生の素の部分――故郷の味、を垣間見た気がした。

弥生は発泡酒の缶を片手に食事を摂った。食事の量は瀬田の1/3くらいで、静かに発泡酒と冷やし中華をすすった。瀬田が食べ終わった頃には、既に頬を赤らめた弥生がいた。
「半分くらいで酔ったの?」
皿を片付けながら瀬田は言う。元来無口な瀬田だが、弥生と一緒の時には人並みにリラックスして話す事が出来た。
「まあね。あんまり得意じゃないのよ、私」
言いながら弥生はベランダへと移動する。
夜風が気持ち良い初秋。月は太り気味で赤みを帯びている。
「月が綺麗ね」
そう言って見上げる弥生に、瀬田は「先生の方が綺麗だ」と思わず言いそうになって慌てて口を閉じた。弥生を前にすると思わず饒舌になってしまいそうだ。

「生きるのはつらいわね」

ぼそりと呟き、弥生は発泡酒の缶を逆さにした。
シュワァァァァと炭酸が弾ける音を立てながら、プランターへと流れ落ちる。
発泡酒が月光を浴びてキラキラと輝いていた。

(金色の涙だ)

瀬田はそんな事を思いながらぼんやりと眺めた。
缶の口から流れ落ちる濁流は、勢いが強過ぎてプランターの土をデコボコに陥没させていた。

「芽が出ない方が幸せな事もあるのよ」

まるで自分に言い聞かせる様に弥生は呟いた。

「傷つかないで生きる事は出来ないのよ。だから、いっそ生まれない方が良い」

瀬田は何も言えなかった。「そうでは無い」とも、「大丈夫」だとも。
その儀式は瀬田の見ている限りでは毎晩の様だった。

そして、いつも見ていないふりを――――





「瀬田」
低く落ち着いた声。視界の隅に映る馬鹿デカい体に、瀬田は奴だと確信して振り向いた。
「何?鷲尾」
鷲尾(ワシオ)こと、鷲尾 啓介(ワシオ ケイスケ)はクラス1…いや、学校1の背の高さを誇る、別名「歩くガリバー」だ。
190を越す長身に、ガッシリとした筋肉質の身体。そのくせ尻や腰が細いのだから、大抵の男が羨むモデル体型だったりする。


瀬田は昨夜弥生のアパートで眠れない夜を過ごしたわけだが――微かな希望を持って待っていたのだが――弥生は勿論現れる事はなく、これ以上ここに居ては不法侵入も甚だしいので瀬田は唇を噛んで帰路へ着いた。
たくさんの悲しみと寝不足を抱えながら、行く場所を失った瀬田は否応無く登校した。
ピカピカに晴れた空や女生徒の明るい声にイライラする。しかし瀬田は我慢強く気持ちを押し隠していた。


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