シスコン『第八章』-3
その文化祭実行委員会から逃げた女、春夏は今、白鳥と喫茶店にいた。
「すいません。付き合わせてしまって。」
「いや…大丈夫だよ。うん。」
春夏はコーヒーを一口飲む。
「…秋冬君の様子はどうですか?」
春夏の動きがピタリと止まった。
「…やっぱり、春夏さんの事が好きだとバレて、あなたと顔を合わせられませんか?」
春夏はコーヒーカップを置いた。
「何が言いたいの?」
「いやね、叶わない恋をしている彼がかわいそうでかわいそうで。」
白鳥は微笑んだ。
「…秋冬はね、理由無く人を好きにならないの。」
「………?」
「そして、理由無く人を嫌いにもならない。」
春夏は白鳥を見た。
「秋冬はあなたを嫌ってるの。…何故?」
白鳥は表情を崩さない。不敵な笑みを、崩さない。
「何故でしょうね。」
春夏は金を置いて立ち上がる。
「何かしたんでしょ?秋冬に。酷い事してたら、許さないから。」
春夏は喫茶店を出た。
「…仲の良い姉弟だねぇ、まったく。」
白鳥はコーヒーを飲み干した。
「会議を始める前に。オレが生徒会長の…、」
会議が始まろうとしている。
「会長!そんなんいいから会議しようぜ!」
「そうだな。じゃあ…北川、これみんなに配ってくれ。」
北川は黙って立ち上がり、会長からプリントを受け取った。
「それは今年の文化祭のプログラムだ。仮だがね。」
秋冬はそれを確認した。確かに、番号がふってある欄は、所々抜けている。恐らくそこにはクラス毎の催しがあるのだろう。
「二年生三年生は気付いたと思うが、去年あったクラシックコンサートはあまりにも不評だったから今回は無しだ。」
話によると、つまらなさ過ぎて寝る人が多かったらしい。
「今年も、もちろん一般の人も春日高校にくる事になる。くれぐれも、問題行動等起こさないように。」
会議は続く…。
『ピンポーン』
「…?はーい?」
春夏の家に、誰かがきたようだ。春夏は玄関に出る。
「あれ…?梓?」
「やっほー。」
「なにしてんの?部活は!?」
「うーん……、サボった。」
「…はぁ!?」
梓は笑う。
「話あるんだけど、いいかな?」
梓の目は、笑ってなかった。春夏に断る勇気はなかった。
春夏は梓を通す。
「…で、どうしたの…?」
冷蔵庫を開きながら、春夏が言った。
「…優魅の事。」
「…そう。」
二つのコップに、オレンジジュースを注いでいく。
「秋冬君の、掲示板の事件。」
梓の言葉に、春夏は一瞬動きを止めた。
「あれから優魅、学校にきてないの。」
会議も終わり、秋冬と千里は会議室を出た。