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シスコン
【コメディ 恋愛小説】

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シスコン『第八章』-11

そして、文化祭は始まる。
生徒や一般の人が体育館に集まる。
「秋冬君!頑張ってね!」
舞台袖から千里が言った。今幕は降ろされている。
「おう。」
秋冬はマイクを持った。体育館全体の照明が落ちて、生徒がざわめく。
幕が上がる。スポットライトが秋冬だけを照らす。
「静かにしろ。」
司会の放つ物とは思えないほど冷めた声。秋冬の声だ。
「三年生、最後の文化祭楽しんで。一般のお客様、本日はおこしいただきありがとうございます。」
前口上も終わり、秋冬はマイクに通るほどはっきりと息を吸い込んだ。
「じゃ、始めるか?」
生徒達が、わあぁーっと叫んだ。
「第五十二回、私立春日高校文化祭始めるぞ!!!」





「すっごくかっこよかったよ!」
千里が言う。オープニングも終わり、今から自由だ。
「そっか。ありがとな。」
「あぁ〜!司会の人だ!」
女子生徒が秋冬を見て言った。秋冬はちょっと恥ずかしくなった。
千里は秋冬の背中を叩いた。
「ほら、早くデート行っておいで。」
秋冬は微笑む。
「あぁ。」
秋冬は待ち合わせした場所に行く。そこには、すでに優魅がいた。
「早いね。」
「そうかなぁ?」
優魅が笑う。
「じゃ、行こっか?」
「うんっ!」
優魅が手を差し出した。もちろん握手なんかじゃない。
秋冬は意味を瞬時に理解し、フッと微笑んで、その手を握った。
「どこ行く?」
優魅が秋冬に聞いた。
「そうだな、腹減ったから、なんか食べたいな。」
「じゃぁ買おう!」
優魅の元気がいい。秋冬にはそれがうれしかった。
二人は三年生が出している焼きソバ店に向かった。まだ昼にはちょっと早いからか、そんなには並んでいない。
「ちょっとぉ!!!目玉焼きついてないの!?焼きソバには目玉焼きでしょう!?」
列の一番前からそんな言葉が聞こえ、秋冬は溜め息を吐いた。
春夏だった。
「なにやってんだ姉貴は…。」
優魅も苦笑する。
結局春夏は目玉焼き無しの焼きソバで我慢した。焼きソバを持ってこちらに近付いてくる。
「あ、秋冬!あんたに買ってあげようと思ってたのよ。はい、二つあげる。」
秋冬と優魅の分であろう。春夏は焼きソバを二つくれた。
「ありがと。助かるよ。」
「いいのいいの!じゃ、私はこれで。」
去っていく春夏の手に、焼きソバがあと三つあったのは自分の見間違いだろうか?
秋冬はそんな事を考えた。
二人は焼きソバを食べ終え、校内をぶらつく事にした。
「いらっしゃいませぇ!!!」
優魅の希望で、二人は秋冬のクラスの喫茶店にきた。
「あっ!秋冬君きたよ!!」
そう誰かが言うと、店員達のテンションが上がった。
「ご注文は?」
その中で一人異様にテンションの低い男。澄がきた。
「そうだな、アイスティーくれ。」
「私もそれで。」
「よろこんで。ちゃんと金払えよ。」
客に言うべき言葉ではない。
「わかってるよ。」
澄は微笑んで、戻っていった。
「なんか…機嫌悪くない?」
優魅が秋冬に言った。
「あぁ、やっぱりそう思う?」
二人は苦笑するしかなかった。


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