その後の淫魔戦記-9
体はその空間に浮いているだけで、足元はまるでおぼつかなかった。
「桜の内側が、こんな風になってるなんて……」
未緒の呟きに、有月は微笑む。
「これは妾の分身を出入口とした異空間じゃ。桜そのものの内側ではない」
直人は、未緒の背後からその体に腕を回した。
優しく抱き締め、耳を食む。
「あ……ん」
近付いてきた有月は、反対側の耳を甘噛みし始めた。
「当主の妻女よ……そなた、名は?」
今更ながらに名乗っていなかった事に気付き、未緒は言う。
「神保……神保未緒、です」
直人の手が、ワンピースを脱がしにかかった。
「そなた、妾の口吸いを受け入れられるか?」
意味の分からなかった未緒は、夫を見上げる。
「有月は、古い生き者なんだよ」
直人は、笑って説明した。
「今じゃ恋人同士は体を繋げる前にキスを済ませるのが一般的だろうけど、昔の日本じゃごく親しい男女の寝所での行為だったんだ。有月は、初対面の君が自分とのキスを拒否するんじゃないかと尋ねてるのさ」
質問の意味が理解できた未緒は微笑んで、有月に答を示す。
彼女の頬を捉えるや、唇を重ねたのだ。
「!」
少し驚いた表情を見せる有月だったが、すぐにキスへ応える。
その間に直人は、未緒を下着姿に剥いてしまった。
細かい刺繍とレースがあしらわれた見るからに高級感の溢れるラベンダー色の下着を、体を離した有月は物珍しげに眺める。
「遥かな海の向こうからやってきた習慣でね。女達は今、こういう形式の下着を身に着けているんだよ」
直人の説明に、有月は納得したらしい。
自らも羽織っている袿に手をかけ、脱ぎ始めた。
「当主よ。そなたは脱がぬのか?」
全てを脱いだ有月の微かに非難の入り混じった声に、直人は苦笑する。
「今すぐに。有月」
直人が服を脱ぐ傍らで、未緒は下着に手をかけた。
未緒が下着を脱ぐプロセスを、有月は興味深げに見つめる。
「成る程……このように小さき物でも、きちんと留められるのだな」
外されたブラジャーのホックを見て、有月は感心した声を上げた。
「まこと、興味深いの」
「……あまり、見ないで下さい」
自分の下着をじろじろ見られるというのはさほど面白い経験ではないため、未緒は控え目に抗議する。
「おお、これはすまぬ」
種族は異なってもそこは女同士、未緒の言いたい事を理解した有月は素直に謝った。
「お詫びに、気を入れてやらねばのう」
にんまり笑った有月は、未緒の上に覆いかぶさる。
タイプの異なる美女二人が、直人の眼前で絡み始めた。
「んん……!」
先程キスを拒否されなかった事が嬉しいのか、有月は未緒の唇を吸い始める。
直人は二人に近付いて、未緒の体を背後から抱き締めた。
サンドイッチにされた未緒は逃げようとでもいうのか、体を左右にくねらせる。
「逃げられないよ、未緒」
そう言ってなだめると、直人はたっぷりした乳房に指を這わせた。
母乳が出るのであまり強い刺激はできないが、それでも性感を高ぶらせるには十分な愛撫を施し始める。
その間も有月は未緒の唇を吸い立て、豊かな肉体のあちこちに指を這わせた。
「ん……ああ、ん……」
直人は背中に唇を落としながら、腹部へと指を這い込ませる。
その部分は既に膨らんで、少し潤みを帯びていた。