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淫魔戦記 未緒&直人
【ファンタジー 官能小説】

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淫魔戦記 未緒&直人-1

「ああ、伊織様……かっこよすぎぃ!」
「あなたになら、抱かれてもいいっ!」
騒ぐ友達に囲まれながら、藤谷未緒は落ち着かなかった。
どうも今朝から体調がおかしい。
これは、もしや……。
そういえば、ここしばらくは我慢してたし……。
最悪の想像が胸をよぎり、慌ててそれを打ち消す。
だがその程度でごまかされるはずもなく、不安は澱のように溜まっていく。
あれこれ考えて黙り込んでしまったのに、友達が気付いて声をかける。
「未緒、あんたも参加しなさいっ!」
未緒は後ろから首根っこを掴まれ、雑誌に顔を突っこまされた。
目に入ったのは、一人の色男。
ブランド物らしいスーツを完璧に着こなし、首には細い金のチェーンネックレス。
腰まである長く綺麗な髪は、途中でゆるく結ばれている。
何よりも……瞳が印象的だった。
すれ違っただけでも女の全てを蕩かしてしまいそうな、妖しく危険なものを秘めている。
そんな人物がかっこいいポーズを取って紙面の向こうからこちらを見つめているのだから、そりゃかっこよくないわけがない。
だが未緒にはそんな物よりも切羽詰まった事情があったので、適当な相槌を打っておくだけにした。
「ああ、確かに……」
「でしょでしょでしょうっ!!」
相槌をきっかけに、また友達が騒ぎ出す。
その隙を縫って、決心した未緒は席を立った。
廊下に出ると制服のポケットから携帯を取り出し、電話をかける。
『もしもし?』
二回ほどのコール音の後、すぐに相手が出た。
『未緒、何かあったの?』
声はまだ若い。
声変わりを終えていない、涼やかな声だ。
「直人様……あの、今夜の予定は、あります?」
自分から誘いをかけるのだから、未緒の声には隠し切れない羞恥があった。
『……分かった。帰ったらすぐ離れに行くよ』
声の主はすぐに事情を飲み込み、そう告げた。
「ありがとうございます。それでは……」
『夕食とお風呂の準備もよろしく』
「はい」
電話を切ると、未緒はフウッとため息をついた。
また、彼に迷惑をかけてしまう。
いくら大人びてはいても、四つも年上の女とセックスなんか、したくはないだろうに。

スーパーに寄って食材を買い込むと、未緒は高級住宅街へ足を向けた。
高級住宅街の一区画分かそれ以上を占める古い屋敷の裏手に回り、預かっている鍵を使って裏門から屋敷に入る。
少し歩くと、屋敷の離れがあった。
平屋だが、床面積は未緒と母の住む賃貸マンションよりも広い。
二人がいつでも気兼ねなく使えるよう、この離れには厳重な防音が施してあった。
預かっているもう一つの鍵を使って玄関を開け、未緒は離れに上がる。
台所に食材を置くと未緒は自分用にあてがわれた部屋に行って、部屋着に着替えた。
浴室に行って浴槽に湯を張りながら、夕食の準備に取り掛かる。
ぱたぱたと立ち働いていると、玄関の開く音がした。
未緒は慌てて迎えに出る。
玄関にいたのは……少年だった。
まだローティーンのはずだが、素直にそうとは言わせない雰囲気を身に纏っている。
美しく整った顔立ちはやけに大人びているが、体つきは年相応で肉付きが薄い。
神保直人。
それが、この少年の名だった。
この屋敷の持ち主にして、実の父を押しのけて平安時代から続くという神保家の当主でもある。
その理由は……。
「直人様」
「呼び捨てでいいって、前から言ってるのに」
未緒の言葉を聞いて、直人が苦笑した。
「俺の方が年下なんだし」
「でも……」
その特殊な生い立ちを聞いているが故に、本来なら様付けでも足りないくらいだと未緒は思っている。
「まあいいや。準備できてる?」
「あ、布団はまだ……」
「分かった。それは使い魔に任せよう」
直人が腕を一振りすると、指の先からキラキラしたものが振り撒かれた。
キラキラは意志を持っているかのように渦を巻き、寝室目がけて廊下をさらさらと滑るようにして行ってしまった。
程なくして、寝室からばたばたという音が聞こえ始める。
「これでよし。さ、食事にしよう」


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