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ずっと、好きだった
【片思い 恋愛小説】

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ずっと、好きだった(2)-2

『もう、会えないな』
あの人がそう言ったとき、少しでも‘寂しい’と思ったのは確かだ。
ただ、再会をこんなにも嬉しく思ってしまうとは、さすがに想像できなかった。
「ゆうき…」
その横顔を見つけた瞬間、私は走り出していた。
人込みを掻き分け、息を切らし、忘れたいはずの背中を追いかけた。
「ゆーきっ!」
彼は足を止めたが、むこうを向いたままだ。
「悠紀」
距離を縮めながら、もう一度名前を呼ぶ。
彼は目線を落としたまま振り返り、ゆっくりと顔を上げた。
「…ノリ」
懐かしい響きに、全身が震える。
悠紀が、目の前にいる。
「一年ぶり…くらい?」
「ああ、それくらいだな」
黙ったまま見つめ合う私たちの横を、たくさんの人が通り過ぎてゆく。
何か言いたいけれど、浮かぶ言葉はどれもくだらなくて。
彼も唇を開いたり閉じたり、何か言おうとして戸惑っているのがわかった。
「…し」
「え?」
「彼氏と、うまくいってるのか」
答えようとしたが、言葉が出なかった。
秀司はあの頃と違って浮気もしなくなったし、私を見つめる眼差しも優しくなった。
私も相変わらず彼を想っていて、なにもかもうまくいっている。
けれど、悠紀にそれを伝えるのは何となく躊躇われた。
「どっか、入ろうか」
思わぬ彼の提案に、応対が一瞬遅れる。
「急いでるなら、いいけど…」
「大丈夫!行く!」
つい、前のめりになってしまった。
彼はまるで昔のように、私たちの関係が捻れてしまう前のように、顔をくしゃくしゃにして笑った。


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