恐るべき子供-5
[誰?]
[担任の蔵野先生]
母親の口からそう聴いた美奈は、不可解と思いながらも、自身の"秘部"が熱くなるのを覚えた。
[替わりました]
[竹野……]
受話器越しに聴こえる蔵野の声に、頬を染める美奈。
[センセイ……]
[明日の昼……1時頃、〇〇駅の前に来ないか?]
となりのキッチンでは家族が電話を気にしながら夕食を摂っている。平静を装うとすればするほど美奈の頬は紅潮していく。
[…分かりました…]
[オマエの望んだ事をしてやる…]
蔵野の言葉に、美奈は身体から力が抜ける。ヒザが震える。必死にダイニング・テーブルに戻り自分の席に着いた。それを見た家族は美奈の異変に気づいたように、
[顔、赤いわよ……大丈夫?]
母親が美奈に言った。
[大丈夫……少し熱っぽいだけ]
[先生、何て?]
[な、何でもない……来週の宿題の事……]
そう言うと美奈は、夕食を途中で止めると"熱っぽいから"と、自室へと消えたのだった。
母親はそれを見て"変ねぇ"と思ったが、それ以上は考えなかった。
ー日曜午後ー
美奈は〇〇駅の前に立っていた。
淡いブルーの袖無しボーダー・シャツにデニムのホット・パンツ。紺のデッキ・シューズと相まって彼女の肢体を際立たせている。
美奈の視線とは逆からクルマのクラクションが聴こえた。彼女は、その音の方向に顔を向けた。見慣れたシルバーのハッチ・バック。蔵野のクルマだ。蔵野はサングラスを掛けていた。
美奈はクルマに駆け寄る。
[さ、乗って……]
蔵野はそう言って助手席をアゴでしめした。美奈は頷くと助手席に滑り込む。クルマは駅前を走り出すと、繁華街へと向かった。
繁華街外れにあるラブ・ホテルの地下駐車場に蔵野のクルマは停まった。
蔵野は先にクルマを降りると、助手席ドアーを開ける。
[さあ、降りるんだ]
蔵野は美奈を隠すようにホテルに入っていった。
円形のベッドに、きらびやかな装飾が印象的な部屋だった。美奈の心臓は激しく鼓動する。その音が蔵野に聴こえるのではないかと思うくらいに。
これから行う事への憧れと恐怖がそうさせていた。
蔵野も我慢出来ないように部屋に入るなり、美奈を抱きすくめ、唇を重ねる。