秘密〜哉嗣の想い〜-3
3 秘密
〜哉嗣の想い〜
寝る前と違って、落ち着いて話している。薬が聞いてきたのだろうと安心した。
「でも、お兄様に迷惑をかけてしまって・・ごめんなさい。家に帰るわ」
もそもそと体を起こす。
「いや、無理しないで良い。治るまでいれば良いさ」
ふっ、と笑う。久しぶりの笑顔だ。
「でも、」
「家が嫌なんだろう?なら、ここに居れば良い」
そういうと、安心したように菖は笑った。
「お兄様、ありがとうございました」
数日後、すっかり元気になって俺にお礼を言った。
「どぉいたしまして」
俺と菖は笑顔で話す。 いや、話すことができた。
菖の風邪で、初めて菖を妹と思うことができた。愛しいと思った。それが、素直に嬉しいと思う。そう考えることが出来るようになったことも嬉しい。
けれど、年を重ねるに連れて愛情が変わっていく。妹としての愛しさより、相手は、菖だった。
俺は、『妃』の籍に入ってないから大丈夫だと言っていたが、そんな問題じゃないと思う。第一、菖と俺の気持を無視している。俺が良くとも菖は嫌がるだろう。兄妹なのだから。
予想通り、振られてしまった。分かってはいたが、やはりショックだった。
「・・他に好きな人が居る、か。やっぱキツイな・・・」
覚悟はしていたんだが・・。
ふうっと溜め息を吐き、時計を見る。少し早いが、別に良いだろう。起き上がり、顔を洗いに行く。
「・・・冷たい。」
冬なのだから、当然なのだが。今日は一段と体に響く。
「お早うございます。」
ふいに後ろから声がした。
「ー・あぁ、」
「お食事を御用意致します」
頭を下げ、去っていく。
「食べる気は、しないなぁ」
苦笑した顔が、鏡に映った。
「おーい、哉嗣!!」
大学の裏庭で呼び止められた。
「聞いたぞ。お前司法試験受かったんだってな」
ぽんぽんと肩を叩く。
「達弥(タツヤ)、情報遅い」
親友の手を払い、歩き出す。
「相変わらず、覚めてんなー。そんなんじゃ、女にもてねーぞ」
「ー・・・別に良い。もてなくても困らないし」
「はいはい。お前には婚約者が居たな。けど、まだ中二だろ?犯罪じゃねーの?」
うらうら、と頬をつついてきた。
「ウルサイよ、君。」
じろ、と睨む。
「おっと。悪ぃ、冗談、冗談」
ごめん、ごめん。と両手をあげる。
こいつは、依杉 達弥(イスギタツヤ)。小さい頃からの親友だ。俺と菖の事も知っている、唯一の人物(親戚を覗いて)。
「菖ちゃんに振られて寂しいなら、俺がお相手致しましょうか?お兄さん♪」
「うるさい。」