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秘密
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秘密〜哉嗣の想い〜-4

4 秘密
〜哉嗣の想い〜
「哉嗣様っ」

 帰ってきて早々、ばたばたと慌ただしく迎えられる。
「あぁ、良かったですわ」
「何かあったのか?」
「旦那様が急にお嬢様と哉嗣様にお会いになりたいと申されまして、お嬢様はまだお帰りになられておられませんから」
「菖が?まだか?」
少し考え、
「俺が迎えに行こう」
「しかし・・・」
止めようとするのを抑え、菖の学校へ向かう。


 とは言っても、幼稚舎から大学院まである学校だ。高等部が何処か分からない。更に、女子棟と男子棟に分かれていて、実に複雑だ。

案内して貰おうと、周りを見渡す。と、丁度良いところに女生徒が通りかかる。
「すいません」
「はい?私かしら?」
如何にもお嬢様らしい仕様で振り返る。
「女子中等舎は、どこかな」
「え・・」
戸惑うように、俺を見た。怪しんでいるのだろうか。
「失礼ですが、どちらの方でしょうか?」
「え?あぁ、中等部二年の『妃 菖』の知り合いです。って、名前言っても分からないですよね」
 どうするべきか・・・。
困ったように笑い、とりあえず少女にお礼を言おうとする。

「・・菖ちゃんの?」
 ぽつりと少女が呟く。
「え?」
思いがけない返事に驚いてしまった。
「お名前、お聞きしてもよろしいでしょうか?」
「あ・・。哉嗣、杉崎 哉嗣(スギサキチカシ)」
名前を言うと、まあっと少女が微笑んだ。
「貴方が哉嗣さんなのね。菖ちゃんの、婚約者」
にこっと微笑まれる。ー何で知っているのだろう・・・?

「ならば、案内しますわ。・・と言っても、ここがそうなのですけどね」
ふふっと笑う。
「ごめんなさい、いまいち信用して良いのか分からなかったので」
ぺこりと頭を下げる。
「いや、別に、」
気にしてない、と笑う。
「それと、菖ちゃんが何処かは分からないですわ。お役に立てなくてごめんなさい」
代わりに職員室を教えますわね。と言い、紙に書いてくれた。
「では、ごきげんよう」
「ありがとうね」


『ちゃん』で呼んでいたから、三年生だろうと思う。しかも、菖ととても親しい。
少女に感謝し、職員室へ向かう。





「あれ?」
向かう途中に、人に気付く。服装からして先生だろう。
手間が省けたと思い、話しかけようとする。
と、人影が揺れた。いや、倒れたと言った方が良いだろう。
「えっ!?ちょ、大丈夫ですか!?」
近寄り、体を支える。顔が青ざめて、苦しそうだ。
「君、は・・・、」
誰だ?と唇に乗せる。声ではなく、息と一緒に出される。
「それより、大丈夫ですか!?」
「・・・だいじょうぶ。いつもの、事だ」
その場に座り込み、ふーっと息をはいている。
「いつもの、って」
困惑したように、相手を見る。
二十代半ばぐらいだろう。白い肌に、黒い髪が印象的な人だ。
「で、君は誰?」


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