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壁に鍵穴
【コメディ その他小説】

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壁に鍵穴・前編-4

慌てて飛込んだ自分の部屋のドア、その向こうに辿り着いた僕の口から漏れた最初の言葉は「うわぁ、やっちまった」だった。
鍵穴の事が訊けなかったばかりか、世間話しすらろくに出来なかった。
しかも、辛うじて挨拶はしたものの、あまりにも低レベル。
だが今回の場合、失敗した原因が全て僕にある訳では無いと思う。
だって、そうだろ?
いきなり女の子が至近距離に「あんな」格好で現れたら、普通は焦る筈だ。
そりゃあ、たしかに最近は真夏ともなれば街中で「あんな」格好をしている娘を良く見掛けるさ。
しかし先ほどの場合は距離がマズイ!

僕は思い直すと、再び玄関のドアに手をかけた。
当然、左隣の部屋の住人から鍵穴の正体を聞き出す為だ。
まさか今度も、どちらかと言えばタイプの女の子が、屈託なく微笑みながら下着同然の姿で出てくるなんて事は無いだろう。
そんな偶然は三流少年マンガ誌の安物ラブストーリーだけで十分だ。
相手が「普通」なら上手くいく、それがたった今得た確信。


勢いを付けて向かった、左隣の部屋。
番号の横には、原田と書いてあった。
今度はちゃんと、ドアが開ききってから挨拶をする!
そして短刀直入に鍵穴の事を訊く!
もう変な顔をされてもいい、鍵穴の正体だけが最優先事項だ!
僕は、躊躇わずに力強く呼び鈴のボタンを押す。
すると呼び鈴の隣のスピーカーから「はぁい」と少し甘めな女性の声が響いた。


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