十七の夏〜セミシグレ-3
気付いた時にはもう携帯電話をかけていた。
出ない。
いつもなら起きているはずなのに。
夢の中の内容が甦る。
「そんなわきゃ、ねえよな……そうだよ。寝ちまったんだよ」
自分に言い聞かせるが、やはり胸騒ぎが収まらない。
俺は、真理の実家の番号を押していた。
ガチャ。
何回かのコールの後に、誰かが電話を取った。
『もしもし、早瀬ですが…』
「夜分にすいません、吉岡と言います」
『吉岡って、勇君?』
最初は焦っていてわからなかったが、その声はよく聞いた真理の母親の声だった。
ミンミンミンミン。
また蝉が鳴いている。
「すいません、真理に話したいことがあるんですが……」
『……』
返事が無くなる。俺はもう一度聞き直した。
「すいません、真理は……」
『真理は……いません』
蝉が鳴くのを止めた。
「……え?」
『真理は……事故にあって……』
ミンミンミンミン……。
蝉が再び鳴き始めた。