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十六の春
【純愛 恋愛小説】

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十七の夏〜セミシグレ-3

気付いた時にはもう携帯電話をかけていた。

出ない。

いつもなら起きているはずなのに。

夢の中の内容が甦る。


「そんなわきゃ、ねえよな……そうだよ。寝ちまったんだよ」


自分に言い聞かせるが、やはり胸騒ぎが収まらない。

俺は、真理の実家の番号を押していた。


ガチャ。


何回かのコールの後に、誰かが電話を取った。


『もしもし、早瀬ですが…』
「夜分にすいません、吉岡と言います」
『吉岡って、勇君?』


最初は焦っていてわからなかったが、その声はよく聞いた真理の母親の声だった。


ミンミンミンミン。

また蝉が鳴いている。


「すいません、真理に話したいことがあるんですが……」
『……』


返事が無くなる。俺はもう一度聞き直した。


「すいません、真理は……」
『真理は……いません』


蝉が鳴くのを止めた。


「……え?」
『真理は……事故にあって……』


ミンミンミンミン……。


蝉が再び鳴き始めた。


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