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十六の春
【純愛 恋愛小説】

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十七の夏〜セミシグレ-2

「真理…?」


真理だ。俺の声が届かないのか、いくら大声で呼ぼうとも、真理は此方を振り向かない。


不意に何かが耳に入る。


ミンミンミンミンミンミン……。


蝉の鳴き声だ。それはやたらにうるさく、俺の耳を叩いた。

ふと、真理の周りに光が広がる。すると、ある景色が浮かび上がった。


ミンミンミン。


見たことのない十字路に真理は立っている。空は紫に染まっていた。


ミンミンミンミン。


五月蝿(うるさ)くて仕方がない。


真理の前をバイクが通る。しかし、そのバイクが直進しようとした瞬間、横からもう一台のバイクが飛び出す。

見事に二台のバイクはぶつかりあった。


ミンミンミンミンミンミン……。


バイクはお互いに弾かれ、一台が歩道へと吹き飛んだ。その先には……。


「真理ィッッ!!!」


ミンミンミンミンミン!!ミンミンミン……。


バイクの車輪が真理に当たる。真理の足がありえない方へと曲がる。壊れた人形のようにその場に真理は倒れた。


ミンミンミンミン……。




「うわあぁっっ!」


シーツをはね上げ、俺は目を覚ました。


「はぁっ、はぁっ……はっ……」


時計を見ると、針は十二時前を指していた。


「そうか…バイトが終わってそのまま……」


胸騒ぎがする。


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