十七の夏〜セミシグレ-2
「真理…?」
真理だ。俺の声が届かないのか、いくら大声で呼ぼうとも、真理は此方を振り向かない。
不意に何かが耳に入る。
ミンミンミンミンミンミン……。
蝉の鳴き声だ。それはやたらにうるさく、俺の耳を叩いた。
ふと、真理の周りに光が広がる。すると、ある景色が浮かび上がった。
ミンミンミン。
見たことのない十字路に真理は立っている。空は紫に染まっていた。
ミンミンミンミン。
五月蝿(うるさ)くて仕方がない。
真理の前をバイクが通る。しかし、そのバイクが直進しようとした瞬間、横からもう一台のバイクが飛び出す。
見事に二台のバイクはぶつかりあった。
ミンミンミンミンミンミン……。
バイクはお互いに弾かれ、一台が歩道へと吹き飛んだ。その先には……。
「真理ィッッ!!!」
ミンミンミンミンミン!!ミンミンミン……。
バイクの車輪が真理に当たる。真理の足がありえない方へと曲がる。壊れた人形のようにその場に真理は倒れた。
ミンミンミンミン……。
「うわあぁっっ!」
シーツをはね上げ、俺は目を覚ました。
「はぁっ、はぁっ……はっ……」
時計を見ると、針は十二時前を指していた。
「そうか…バイトが終わってそのまま……」
胸騒ぎがする。