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十六の春
【純愛 恋愛小説】

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十七の夏〜セミシグレ-1

「ごめんね」


俺がそう告げると、彼女は目を赤くして走っていった。

相手は一つ下の学校の後輩。

メールや電話で告白されるよりは遥かに嬉しいが、やはり付き合うまでには考えられなかった。

はぁと一息。少し汗ばんだシャツをばたつかせる。

暑い。とにかく暑い。あいつも暑がってるのかな。けど暑いの好きだったからな、大丈夫だな……。

そんなことを考えてふと気付いた。

あれから一年以上経ったのか。


必ず。必ず迎えに行くから――。


「真理…」


あの時言った自分の言葉を思い出す。



お互いに離れた直後は悲劇の主役を演じていたが、今は大分落ち着いた。今はメールや電話をしても、暗い話題は出てこない。

今でも、週に一、二回程度にメールを続けている。



その日の夜、俺は真理にメールをした。なんてことはない、元気でいるかというメール。


『元気だよ!今日はね………』


メールの内容を見て安堵する。昔は、辛い苦しいが何度も文章の中に入っていたが、真理の実家の自然が彼女を癒してくれたのだろう。

何通かやりとりをした後、バイトが入っていたので俺はメールを切った。

家の玄関を開けると、紫色の空に星が輝いている。空を見上げながら、懐かしい音色が俺の耳を抜けていくのに気付いた。



ミンミン……ミンミンミン…ミンミン……。



「蝉時雨か……」


童心に帰った気になりながら、俺は原付にキーを刺しこんでバイトに向かった。




気が付くと、目の前にはただただ闇だけがあった。

誰かの声が聞こえる。


声の聞こえる場所へ向かう。少し闇の中を歩くと、一ヶ所だけ明かりがともっていた。


誰かが、立っている。


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