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はるかぜ
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隣人は雨の香り-5

「最悪だ」

涙が滲む。泣き出してしまいそうになるのを必死に抑えて、打開策を考える。

この時間だと管理人も帰っているはず。だから電話を借りる訳にも行かない。
両親は合い鍵を持ってるだろうけど、二人に電話する電話がない。

「うー」

おまけに風も冷たくなってきて挨拶だけだからと薄着で来た体はどんどん冷える。
両手で体を抱きしめて無い頭をフル稼働で考えて、ちらりと横目でお隣さんを見た。

もちろん、夫婦じゃない方の。

「さっき困ったらって言ってくれたし」

社交辞令と言う言葉はこの際私の辞書から消して、お隣さんのインターホンをもう一度鳴らした。

しばらくお隣さんが出てくるのを待つが、反応は無かった。

「お風呂、かな」

ため息をついて仕方なく自分の部屋の前に戻り、ドアに背を預けて座り込む。


「馬鹿だなあ、私」


ため息をまたついて袖口に手を入れた。体育座りをして体を丸める。

時計も無いから時間を測る事も出来ない。

「男の人だからそんなに長くないよね」

心の中で数を数え始める。
1分が60秒だから10分なら600秒。


458

459

500……





597

598


「600……」


立ち上がりもう一度お隣さんのインターホンを鳴らす。
すると今度は玄関が開かずにインターホン越しに声がした。

「はい」

さっきの男の人の声。心の中で万歳をしてからインターホンに向かう。

「あの、隣の上村です」
「ああ、さっきの?ちょっと待ってね、服着てそっち行くから」

インターホンが切れる。良かった、やっぱり良い人かも知れない。そう思いながら待つこと数分。
目の前のドアが開いてジーパンに長袖の黒いTシャツ。銀色のオシャレなアクセサリーを付けた、お隣さんが出てきた。


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