正夢〜幸福-4
『なんかいいことあったのか?』
「まぁな」
『そうか、じゃあそれは一体なんなのかな?』
「お前には関係ない」
渉の言葉を無視して、自動販売機に金を入れる。今日は炭酸が飲みたいな……。
『例えば、誰かが泊まりに来るとか?』
ピクッ。
ジュースを選んでいた指が止まる。
「な、なんのことだ?」
『声が裏返ってんぞ』
考えてみれば、俺も渉も恵も珊瑚(さんご)も同じクラスだ。恵がもし、珊瑚にでも話したら、彼氏である渉にも話が行くはず。
『今日、遊びに』
「来るな!」
結局、渉にはバレてしまい散々からかわれて放課後になった。
明日は土曜。学校はない。
恵は泊まる準備をするために、一旦家へと戻っていった。
「落ち着け…落ち着けよ俺……」
自分に言い聞かせる。別に恵が泊まりに来るのは初めてじゃない。しかし、朝からあんなに可愛い表情をされたら、そりゃ俺だって男だから……。
一人でリビングをうろうろしていると、急にドアのベルが鳴った。
落ち着けよ、落ち着けよ俺……。
自分で念じながらドアを開ける。
「おぅ、いらっしゃ……」
『よぅ、遊びに来たぜ!』
『こんにちは、翔さん』
そこには恵ではなく、渉と珊瑚、そして一学年下の鹿見(しかみ)とエルナちゃんがいた。
『私が呼んだんだよ!』
よく見ると、後ろで恵が飛び跳ねている。
『そういう訳だ。じゃ、上がらせてもらうぜ』
『翔さん……すいません』
恵……。お前って奴は……。