正夢〜幸福-2
「どこか食べに行ってくるのか?」
『やぁねぇ、旅行よ。旅行』
旅行か……。そうか……そりゃあ家も空けるわな。
……。
……。
……。
「なにい!?どこに!!??」
『お父さんの仕事の関係でね、九州に行ってくるの』
「親父の仕事だろ?なんでアンタまでいくんだよ?」
『お父さんといないと、私寂しいもの』
なんてオフクロだ……。
親父は結構な仕事人だ。よく数日家を空けるし、長期の出張もあった。その度々に、オフクロは一緒についていった。
長期出張は無理だったが、一週間程度なら平気でついていく。子どもの頃は、ばあちゃんに預けられることもしばしばだった。
「どれくらい?」
『う〜ん、三日くらいかしら。お母さんも長くパート空けるわけにはいかないし』
充分長いわという文句を堪えつつ、用意された朝飯を食べ終える。しょうがないから、今日の夕飯を考えなくては……。
玄関を出ると、恵(けい)が待っていた。いつも小さいが、何故か今日は余計に小さく見えた。顔を見ると、心なしか表情が曇っている。
「おはよ、恵」
『翔ちゃん……』
「なんだ?具合悪いのか?」
恵はしばらく手を動かし、下を向きながら深呼吸をしている。
『あの、ね』
「うん、どうした?」
『泊めて、くれないかな?翔ちゃんのお家に……』
なんと?
「すまん、もう一回言ってくれ」
『だから、泊めてほしいのっ。翔ちゃんちに』
しばらく意識が飛んでいた俺は、数秒後に恵によって現実に引き戻された。
俺は学校へ歩きながら恵の話を聞いた。
恵の話によると、恵の両親に旅行のチケットが当たったらしい。ペアで二泊、場所は沖縄。