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『限り無く青い春の下で』
【青春 恋愛小説】

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『限り無く青い春の下で』-2

ある晴れた昼下がり、そんな陳腐な表現しか出来ないくらい天気の良い日だった。
俺は年のわりに散歩とか寺社周りとか地味な趣味を持っていて、良く晴れた今日なんかは絶好の散歩日よりだ。
マイバッグに、スケッチブックと筆記用具、デジカメにipod、あと軽い財布を詰め込んで行き先なんてない旅にでかける。
持ち物から察したと思うけど、俺はこんなナリで絵を描いたりする。 まぁそんな真剣なものじゃなくて、あんまりうまくもないのだけれど。 リキ曰く達人の128歩手前の腕前らしい。意味がわかんねぇけど。

歩き始めて1時間くらいたった時だったか…
ipodで流してる一枚目のアルバムが終わろうとしてる時だったのを覚えている。
見知らぬ公園で桜の木につい眼を奪われてしまったんだ。 季節は五月、雨がうるさいこの季節に花びらなんかはとっくになくて、青々とし緑が生い茂ったなんの事はない大きなただの木なのに対して。
今思えば運命ってやつかも、普段は絶対立ち止まらない場所のはずだよな?
神様がモテすぎるツレをもつ俺に慈悲をくれたんだ。
俺は早速スケッチブックを取り出して、達人の128歩手前の腕前をふるった。 思いの他鉛筆は進み、荒くはあるがそれなりの作品が出来上がった。 細かい所を描き足しつつも穏やかな時間が過ぎてくのがわかる。 これだから止められない、散歩だけは。おやじ臭いと言われようが、この時間に勝るものはないのだから…。

作品も終盤に差し掛かった所だった。 枝葉の細かい部分を見ていたから気付かなかったんだけど、いつのまにやら女の人が座って本を読んでいたんだ。 それがとても自然体で、風で揺らぐ葉っぱの影の中で控え目ながらも強く自己主張している様に思えた。
俺はあわてて、彼女をつけたす。 絵の方も全体的にしまりが出来て断然こっちの方が良い。 久しぶりに良く描けたと思う作品になった。
まだまだ完成にはいたらない作品ではあるがとりあえずはキリが良いので、ペンを置く。 顔あげたその先にはさっきの女性の姿はもうなくて、変わりに隣りに人の気配が迫って来る。
「なに描いてらっしゃるんですか?」
ゆっくりとした優しい声がかけられる。 振り向けばそこにはさっきの女性がいた。
目が覚めるような青いスカートに、春を思わせる白いブラウスを羽織り、少し痛んだ感じの麦わら帽子をかぶった女の人は真っ直ぐこっちを向いて続けた。
「わぁっ!すごい上手ですね!?きれー…わっ!これもしかしてわっ私ですか!?」
落ち着いた感じの印象をもつ顔とは反面、でては消える感情の起伏がおかしくてつい笑ってしまう。 疑問、から驚き、そして感嘆。また驚き。 現れては消える表現の波は第一印象で言えば最高のクラスだ。 てか誰だ…?
「ん〜まぁ、一応そのつもりなんだけど。 勝手に描いちゃまずかったかな?」
「えぇっ!?いやいや!とんでもない! こんなきれいに描いてもらって…うれしいです」
ニッコリ笑うその顔に思わずドキッとしてしまう。
心が変になる。 俺が恋に落ちた瞬間だった。
顔が紅くなるのが自分でもわかった。 赤い人よろしく3倍速で広がる緊張の糸。気付くと彼女は隣りに座り込んでいた。
「でも、めずらしいですね? 休みの日に公園のベンチでお絵描きって。 そっち関係の人なんですか?」
…まぁ確かに変な趣味だとは思う。
「いや、別にそういのじゃなくて。ただの高校生だよ。」
なにが『ただの高校生だよ。』だ! あぁやっぱ変な心になってくね…普段使わない口調になってしまう…
「えっ!?高校生だったんですか!?私てっきり大学生ぐらいかと…ごめんなさい!」
いきなりあやまる彼女。 バツの悪そうな顔もかわいい。
「えっ?あぁ、いいよ別に。 むしろ大人に見られてうれしいくらいだ」
「そっそうですか? …えっと、ちなみに高校ってどこの…?」
今度は遠慮がちに聞いてくる。


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