二人の恋愛論3-1
「男の浮気は仕方ないんだよ」
恭介くんが腕を組む。
これは、彼が難しい話を語り始める合図。
実のところ、彼の話は半分くらいしか理解できない。
でも、私はそんな恭介くんを見ているのが結構好きだったりする。
だから、いつもなら延々と続く話をニコニコ聞いているのだけれど、そんなテーマじゃ今回ばかりはそうはいかない。
「人間の男も、結局は動物のオスに過ぎないわけだからね。本能的にできるかぎり多くの子孫を残そうとするんだよ。だから…」
「やだっ!」
「え?」
「そんな話、聞きたくないぃっ」
なんでそんなこと言うの?
恭介くんのばか!!
ばかじゃないけどばかぁ!!
「でも、この見解は間違っているんじゃないかと思うんだよね…って話をしようとしてたんだけど」
恭介くんの言葉に、彼の胸を叩いていた手を止める。
「だって。俺、全く浮気したいと思わないもん」
たぶん、私の顔は真っ赤。
恭介くんは自分がとてつもなく甘い台詞を囁いていることには気付いていないようで、『それとも俺が特例なのかな』なんて首を傾げている。
「恭介くん、大好きっ」
さっきまでの怒りはどこへやら。
私は彼に飛び付いた。
「…君は、男の身体についてもう少し勉強した方がいい」
「へ?」
恭介くんが私を押し倒す。
「好きな子に、そんな風に可愛く抱き着かれたりしたら、良からぬ反応を示してしまうのが男の習性なんだよ」
眼鏡をはずし、妖しく微笑む恭介くん。
「ちょっ…きゃあっ!」
その後、彼に何を『研究』されてしまったのかは秘密。
だって、恥ずかしいもんっ!!