終わりの合図と見知らぬ唄と-1
終わりの合図が鳴る…
曖昧な時間の始まりの合図、特に変わった意味を持たないこのチャイムは、私にとっては地獄への鐘でしかない。
いや…そうでもないかぁ…
普段と変わらない日々の始まりなのだから。
昼休みはいつも一人で食べる。誰もいない屋上で、一人で静かに。誘ってくれる人なんていない。誘ってもあからさまにつまらないから…?
でも今日はいつもと少し違う。風に流れて聞き覚えのない歌が聞こえてくる……知らない歌だ…
屋上に向かう足取りが重くなるのがわかる。唯一、学校で一人になれる場所なのに…
しかし、その歌声はひどく悲しそうな声をしていて、それがとても気になった私の足は、いつもより早く屋上に向かっていた。
ドアを開ける。広がるいつもの孤独…のはずが知らない男が一人、空に唄ってるのが見える。…知らない顔だ…私と同じ眼をしてる…
男はいつしか見とれてしまっていた私に気付いた様で唄うのを止めてしまった。
こちらを向いた顔には不思議の三文字が浮かびあがっていた。ふいに男が言った。
「なに?」
しどろもどろでアタシが答える。
「ごっごめんなさい!邪魔するつもりはなかったんだけど…いつもここでご飯食べてるから…その…」
なに言ってんだ私…答えになってないじゃん…でもなんて言ったらいいんだろ?
「あぁ…、そういう事…じゃぁ邪魔したのはこっちみたいだね?ごめんね」
えっ…あやまられちゃった…
「えっ!?あっ!いやいや!こっちこそ…」
完全パニックな私。
それより誰だろう…?見た事ない顔だなぁ…
この学校にはめずらしい黒い髪の毛に、ウソみたいに真っ黒のビー玉みたいな眼…うつくしいとは形容しがたいが、それでもそれなりにそろった目鼻立ち。
それに…あの歌声……。
男性にはめずらしい甘い声、でもそれは悲しみを帯びていて心がある。
私の興味をそそるのには充分すぎる内容だった…
「たしか…柳 葵(やなぎ あおい)さんだったよね?今からお昼?」
男が質問してくる。
「えっ?あっ…うん…」
なんで私の名前知ってるんだろ?普段目立たない私なのに…
「良かったら…でいいんだけど、一緒しない?」
「へぇっ!?あ?えぇっ!?」
急に切り出した彼の言葉に思わず情けない声を出してしまった私を見て、彼はクスクス笑っている。
「そんな驚く事ないのに。…ダメかな?」
「えっ!あっ!ううん…そんな事ないんだけど…食事誘われるのひさびさだったから…」
彼はまだクスクス笑っている。
「おもしろいね?柳サンて。 いやほら、今日天気いいしさ?一緒にどうかと思って。」
笑った… 顔をくしゃくしゃにして笑う彼、かっかわいい…
「うん…いいよ…」
なぜか紅くなってしまう顔をうつむかせながら答える私。恥ずかしいぃ…
その場に座ってお弁当を開いて食べ始める彼の横に、私も座る。
ゆっくりと、静かに食べていく彼の姿はとっても様になっていた。 やっぱり誰だろぅ…わからない…
見とれてた私に気付いたのか、口に含んだご飯を飲み下し話しかけてくる。