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ハズレ。
【学園物 恋愛小説】

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ハズレ。‐後編‐-1

“彼女”の名は永野 舞衣(ながの まい)着任三年の新米さん。しかし、校内での人気は男女ともに一番の人気教師。
そんな彼女が俺のクラスの副担任になった。
最初は何の接点も無かった。
俺と先生がお互いを強く意識したのは、五月になってからだ。
俺が他のクラスの奴と喧嘩になった後、いつもの様に呼び出された時。生徒指導室で待っていたのが永野先生だった。
『それで、何が原因?』
決して生徒を下に見ない態度、叱ると言うよりは諭すような口調。
『クラスの奴がいちゃもん付けられてて。割って入ったら相手から仕掛けてきたから・・』
『一人残らずKOしたわけね。』
先生は最後の言葉を継ぎ、柔らかく微笑んだ。
その仕草は、知っているはずは無いけど、“母親”を感じさせた。
『他の先生から聞いてたけど、そこまで悪い子じゃないのね。この件は私がどうにかしとくわ。』
そんな訳で、あっさりと帰された。

その日以降、度々先生のお世話になった。けれど嫌な顔もせず、毎回丁寧に対応してくれた。先生と一対一で話すのが楽しくなっていたのは認めざるを得ない。俺はだいぶ甘えてしまっていたのだ。自分が知らない“母親”の優しさに近いものを見つけてしまったから。



雨が窓を叩く音がする。
夕食を食べて、自分の部屋で色々思い出していたらいつの間にか寝てしまったようだ。握ったままにしていた携帯を開くと、またメールが届いていた。
[家に来ないんなら、私から行きます。駅で待ってます。]
届いた時間は20時、今の時間は・・22時。
立ち上がり、家を飛び出す。あの人の事だ、辛抱強く待っている。
夜の街を、脇目も振らず走り抜ける。
『最後の最後まで・・っ!』
憤りが思わず口に出る。


十分後、駅に着く。息も絶え絶えに周囲を見渡す。
先生らしき人物は、いない。気が抜けて、その場にへたりこんだ。
その瞬間、正面から眩い光に照らされる。車のヘッドライトだ。
『遅いっ。』
その車から出てきたのは、先生だった。



『随分、凝った事しましたね。』
濡れた頭を拭きながら、苦笑する。
『昔観た映画でやってたのよ、あれ。一度やってみたくて。』
あの後、俺は先生の車に乗せられて先生の家に来ていた。
卒業式前の謹慎期間に一度来ていたのだが、やはり慣れない。やはり、同年代の女性の部屋に呼ばれる機会が今まで無かったからだろう。
『でも良かったわ。落ち込んではいないみたいね。』『後悔は・・少しはしてますよ?』
自分への皮肉を込めて微笑む。
その時、頭を抱きかかえられる。一瞬の事でとまどっていると、耳元で先生が囁く。
『もう、いいんじゃない?我慢するのは。』
『俺は何も我慢してないです。』
『誰かに甘えることは恥ずかしくないのよ?只でさえあなたは強がるんだから。』
『違う、俺は甘えてばっかりだ。しかも“母親”代わりとして。』
『じゃあ聞くけど、あの時他の女の子の名前が出たらあそこまで怒った?』
言葉に詰まる。そんなことは考えなかった、でもその名前が出たのは許せなかったのだ。
『私はあなたが好き。生徒としてじゃなく、男の人として。あなたは?』
俺?俺は・・。


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