シスコン『第七章』-1
雲一つない晴天の今日。私立春日高校の2学期の始業式だ。
シスコン『第七章』
「で、あるからして、春日高校の生徒として…、」
いつの時代も、どこの学校も、校長先生の話は長いものだ。
「長過ぎないか…?もう十五分たつぜ?」
「仕方ないだろ。校長もこんな日にしか話せないんだから。」
一年五組の列の真ん中より少し前、出席番号が隣りの秋冬と澄が校長の話を聞かずにしゃべっている。
澄のほうが一番だけ番号が若いんだが、少しだけ体を斜めにして秋冬を見ている。
だがこの春日高校。そんな生徒はまだ他にもいて、ざわめきがする。話をまともに聞いている生徒のほうが少ないのではないか。
「この2学期を有意義に過ごし…、」
校長はそれにめげずに話し続ける。
「なぁ、四世弟は昼飯どうするんだ?」
「あぁ、家の近くのコンビニで買うつもりだけど。」
澄がニカッと笑う。
「だったら飯行こうぜ?」
「そうだな。行こうか。」
校長の話も終わったようで、校長がステージから降りる。
二人は前を向いた。
「秋冬君〜。一緒に帰ろ?」
学校も終わって、教室を出ようとした時に優魅がきた。
「じゃあ一緒に飯食べようか。」
秋冬が言った。優魅はうれしそうにうなずく。
ここ最近、学校で噂になっているのが、
浜崎優魅と四世秋冬は付き合っている。という話。
見る人が見ればそうではないと気付くのだが、色眼鏡はなかなか簡単に外せないものだ。好奇の目線で二人を見る人もいる。
「千里、お前もどう?行くか?」
教室を出ようとした千里に澄が話しかけた。
「あ、今日パス。ごめんね。」
「あ、そっか。じゃまた明日な。」
「うん、バイバイ。」
千里が可愛く手を振るもんだから、三人もつられて振ってしまう。
優魅は手を振りながら、梓と一緒に帰るのかな?と、そんな事を思っていた。
「じゃあ行こうか。」
三人は学校を出る為に歩き出した。
「ごめん……、待った…?」
他の学校の四倍は広い体育館の入口で、梓は息も絶え絶えに言った。
「いや、待ってないよ。」
「よかった……。」
待っていたのは男。背丈の低い、パッと見高校生には見えない。
そう、千里だ。
「ほんとに部活休んで大丈夫?」
梓は息を整えて、笑った。
「大丈夫大丈夫。どうせ今日は行かないつもりだったし。」
春日高校一年にしてエースの柚木梓は、意外にサボり魔だった。
「先にご飯食べようよ。僕、お腹減っちゃった。」
「うん、そだね。」
二人は学校を出た。