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シスコン
【コメディ 恋愛小説】

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シスコン『第六章』-7

星が輝く。綺麗な夜空の下を、千里と優魅が歩く。
「明日から学校か…。夏休みって、短いね。」
優魅が言った。
「ほんとだよ。学校…疲れる。」
千里がそう言うと、優魅はクスリと笑った。
「…千里君さ、嘘ついちゃだめだよ。」
「え?」
千里が優魅を見る。少しだけ、見上げる形になった。
「梓に、告白したんでしょ?」
優魅が微笑む。千里はうつむく。
「…夏休みの真ん中頃にね。まだ返事もらってない。少しだけ考えさせてって言われて、柚木さん走って帰っちゃったんだ。」
「デートしてたんだってね。梓、楽しかったって言ってたよ。でも、驚いたって。」
「僕が告白したからでしょ?そりゃ驚くよね。デートに誘ったのも僕だし。」
千里は、人生で一番深いと思われる溜め息を吐いた。
「明日、学校で会ったらどんな顔しよう…。ニコッて微笑む?話しかける?……黙って素通りする……?」
「ちょ…千里君?」
「やっぱり失敗だったんだ。僕と柚木さんじゃあ釣り合わないんだ。無謀な事したな……なんて馬鹿だったんだろ。傷つきたく…なかったのに……!」
「千里君!まだフラれてないじゃん?わかんないよ!?」
優魅は千里の両肩を持った。支えていないと、崩れそうだったから。
「浜崎さんは…秋冬君にもしフラれても、泣かずにいられる?普通に接する事できる?僕…無理だ。弱いんだ。もう話せなくなること考えただけで、死んでしまいたくなる……。」
優魅は確かに、千里の頬に光る物を見た。
それを優魅は親指で軽く拭った。
「…私、一回フラれた。」
「えっ!?」
「フラれた。他に、好きな人がいるって。」
千里は驚いた。優魅がフラれたという事にも、秋冬に好きな人がいるという事にも。
「……私わかっちゃった。わかりたくなかった。」
千里は無言で返す。
「秋冬君の好きな人は、春夏ちゃんだよ。」
千里の涙は、止まった。優魅の目は、潤んだ。
「姉弟としてじゃない。女の子として、秋冬君は春夏ちゃんを見てる。…それが、悔しい。」
千里は、優魅を見つめ、手を伸ばして頬を撫でた。
「…あは、泣いてないって。」
優魅が笑う。千里が言う。
「…カッコわるいとこ、見せちゃったな。」
「大丈夫。君可愛いから。」
「もうっ!!」
二人は再び歩き出す。
「泣いてもいいよ。」
優魅は言った。横を見て、千里に笑いかける。
「相談してね?」
「……もう泣かないよ。多分ね。」
「梓にフラれたら?」
「それは辛いね。泣いちゃいそうかも。僕…弱いから。」
弱くないよ。
優魅はそう思った。言いたかった。けど、言えなかった。
それが何故だかは、優魅本人にもわからなかった。





「まさか付き合わねぇよなぁ?」
秋冬が言った。春夏は動揺しっぱなしだ。
「当たり前じゃない!なんか自信満々な男だったけど、なんか気に食わない!!」
春夏は食器を洗っている。
「…姉貴の好きなタイプってどんなんだ?」
秋冬は意を決して聞いた。
「……そうだね。そばにいてくれる人かな。優しくて、頼りがいがあって、私がいないと死んじゃう〜〜って感じの人。それでいてビジュアル良ければ尚いいね。」
秋冬は少し考えて、冗談混じりでこう言った。
「だったら、オレがいるじゃん。」
春夏はドキッとして、秋冬を見た。
「…悪くないね。」
春夏は皿洗いを続ける。秋冬の顔が真っ赤になった事を、春夏は知らない。





続く


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