ワスレモノ-6
あっ‥‥
ベンチ‥。
でも引き返すのも面倒だしなぁ‥。
何だかんだ言いながら私は引き返した。
公園に着くと思いがけない人がいた。
泣いてる‥?
どうしたらいいのかわからなくて、私は立ち尽くしていた。
私の気配に気付いたその人はゆっくり振り返った。
やっぱり‥‥。
──何で泣いてるの‥‥?
その人は小く蹲って、震えていた。
──今なら
──届く‥‥。
私は拒まれるんじゃないかと少し躊躇したが、そっとその肩を抱き締めた。
──やっと、触れられた。
──ずっと近くにいきたかった。
肩がそっと動いて、気付けば私が抱き締められてる。それでも彼は震えていて、私は子供を宥めるように背中をゆっくり撫でた。