アンブレラ A-1
次の日、朝から俺は帰る準備をしていた。携帯を見たらバイト先の店長から『明後日の朝に入ってくれ』と来ていたからだ。
受信は昨夜の11時だったので、つまりは今日の夜には東京に着かなきゃ間に合わないということだ。
親父に謝ったら「ちゃんとバイトしてるならいいさ」と言われた。さすが親父だった。
もともと持ってきた荷物も少なかったので、昼になる前には家を出て街へ向かった。
残念ながら今日は曇り空。雨の可柏ォもあり。
「憂欝……」
このどんよりとした空気は昔から苦手だった。
好きな奴なんているのか?なんて考えると、一人だけ思い当たった。
そう、元カノだ。
雨が降った日はかなり元気になる。
俺は外に出たくないのにあいつは俺を引っ張り出したものだった。お気に入りの白い傘を持って。
ふと前を見る。人込みの中である娘の後ろ姿を見た。そしてその娘の持ってるものを見た時、俺は自分の目を疑った。
あいつと同じ傘を持っている娘がいた。デザインも色も同じ。
その娘が振り返った。
その時、本当に時が止まった気がした。
互いに気が付いて近づいた。
少し離れて見つめ合った。
「……久しぶりだね」
「あぁ」
そして駆け寄って抱き合った。
「連絡くらいちょうだいよ……」
「ごめんな」
俺の胸に顔を埋める彼女。そして僕は言った。
今日は……今は、一緒にいような。