シスコン『第六章』-6
「じゃ、またな。」
「おう。」
澄は家を出た。
「……さて。」
秋冬は部屋に戻る。
「あ、秋冬君。お茶飲む?」
千里が言った。秋冬はうなずいた。
「姉貴は?」
「勉強するって、部屋に行ったよ。」
優魅が言う。秋冬はふーんと返事をして、イスに腰掛ける。
「僕もそろそろ帰らなきゃね。」
千里が秋冬にお茶を渡してから言った。
「そうか、明日学校だしな。」
優魅もうなずく。
「じゃあまたな。二人とも、気をつけて。」
二人は帰った。秋冬は家の鍵を静かに閉めて、春夏のいる部屋に向かった。
「はかどってるか?」
春夏は机にかじりついていた。
「あと5ページ…。」
「ん、そっか。」
秋冬は微笑んだ。
春夏はそれ以降何も話さずに、黙々と机に向かっている。秋冬はというと、隣りで本を読んでいるだけだ。
それから三十分くらいして。
「できた……。」
「えっ?」
春夏のつぶやきを、秋冬はよく聞き取れなかった。
「できたっ!!」
春夏はそのままバタンと仰向けに寝転がる。
「ご苦労様。なんか飲むか?」
「いや、いいよ。」
春夏は起き上がって、秋冬を見た。
「ごめんね?手伝わせちゃって。」
「いーよ別に。」
秋冬は春夏の頭を撫でる。春夏はちょっと微笑んで、心地良さそうだ。
「ねぇ。」
「ん?」
「あんたって…私の事嫌いなんじゃないの?」
秋冬は動揺したが、顔には出さない。
何故そんな事を聞くのかもわからなかったし、春夏の意外にまじめな顔を見て、秋冬は思考回路が凍っていくのを感じていた。
その時、救いの手は伸びた。
『ピンポーン』
家のチャイムが鳴った。来客の合図だ。
「…出てくるよ。」
秋冬は立ち上がる。部屋を出る秋冬。
春夏は溜め息を吐いて、勉強道具を片付けにかかった。
揺らいだ心を戻せぬまま、秋冬は玄関の扉を開いた。
「こんばんは。」
そこには、自分と同じ年頃の男がいた。
「…こんばんは。」
秋冬は挨拶を返す。
「隣りに引っ越して来た、白鳥です。よろしく。」
そう言って、白鳥という男は、秋冬に菓子折りを渡した。
「あ、どうも。」
「どうしたのー?」
春夏がきた。
「引っ越して来たんだってさ。」
「どうも。はじめまして………。」
白鳥の表情が変わる。何か、特別な物を見つけたような、驚愕の表情を二人は見た。
「そこのお嬢さん…名前は?」
白鳥が言う。
「お嬢さん?」
そのあまり聞かない言葉を聞いて、秋冬は白鳥を凝視してしまう。
「私?四世…春夏ですけど。」
「四世…春夏さん。」
白鳥は真っ直ぐに春夏を見た。
「オレと付き合って下さい。」
その場の時間が、一瞬止まった。
「……はい?」
春夏は、白鳥の告白を受けて、固まった。