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10年越しの約束
【初恋 恋愛小説】

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10年越しの約束-4

約束の場所に着いた時には、私の息はすっかり上がってしまっていた。
息を整えながら、人気の少ない公園をグルッと見渡す…桜の花はもうだいぶ散っていて、僅かに残る花もかなり色褪せている。
寂しい景色…その中に、コウキ君の姿は無い。
しばらく待ってみても、彼らしき人間は一向に現れなかった。

(やっぱり…忘れちゃったのかなぁ……)
考えたくなくても、どんどん悪い方に考えてしまう。
泣きたくなんてないのに、いつしか私の瞳からは涙が溢れていた。
(なんで来ないのよぉ…私と約束したじゃない……)

一頻り泣いた後、私の瞳が鮮やかなピンク色を捉えた。
それは公園の奥の方…そこでは遅咲きの桜が、まだ豊かな花びらを広げていた。
私は引き寄せられる様に、その桜の木に近付いて行った。

風が吹く度にさぁっと花びらが踊る桜の木は、まるでそこだけ別世界の様…絵画みたいに美しい景色の中で、私はそこで佇む人影を見付けた。
その人は私と同じ高校の制服を着て、遠い目で桜の花を見つめている。

「コウキ君っ!」
気付いた時には、名前を呼んでいた。
彼がコウキ君だという確信はどこにも無いけど、目の前の彼が持つ空気が何故だか懐かしくて、コウキ君の様な気がしてしまった。
私の声に、彼が振り返る。
「………ヒジリ?」
返って来た言葉が嬉しくて、私の瞳から今度は嬉し涙が流れ落ちた。
10年ぶりの再会…コウキ君は私の目の前で、以前と同じ様に微笑んでいる。
私達はしばらく無言で見つめ合った後、どちらからともなく言葉を発した。

「「会いたかった。」」

私達の頭上に、桜の花びらが降って来る。
それはまるで…10年の隙間を埋めてくれるかの様に……


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