トラブルバスターズ01[一章]-7
「はい、御主人様ぁ。マリナは何でもしますからもっと可愛がってグチャグチャにして下さいぃ」
マリナは数日前のマリナからは考えられない程に淫靡に服従する。
その変わり様はまるで生まれ変わったようだった。
「じゃあ、ウェイトレスさん」
ミリィはウェイトレスにメニューを指差して一言。
「これとこれとこっからここまでを三皿ずつ」
彼女は常日頃そうしている通りに三人の食事を注文する。
ラックが後悔した時には既に遅かった。
とにかく、彼女達三人の注文した量は凄かった…
「普通の人間ですよね?遺伝子いじってたり、宇宙人だったりしませんよね?」
とりあえず、ラックは聞いてみた。
三者三様に当然普通の人間と言う答えが返ってきた。
確かに大食い選手権を基準にするなら普通の人間だろう。
「何か問題でも?」
ラックの疑問を不思議に思ったのか逆にレイが聞き返した。
「いえ。あまりによく食べるので昔の日本アニメみたいだなと思って…」
「「昔の日本アニメ?」」
ミリィとレイの何言ってるんだろこの人といった感じでオウム返しする。
「あぁ。失礼しました。普通は知りませんよね。私、趣味で西暦20世紀終盤のヴィンテージアニメを収集してましてね。下らない事です、無かったことにして下さい。」
ラックはしまったとばかりに話を打ち切ろうとする。
「俺らは戦闘民族でもないしドラまた魔術師でもゴム人間でもねぇよ。あ、でもやる事一緒か?」
今まで話に加わってなかったバーニィがポツリと呟いた。
「わかるのか?」
「何で知ってるのよ?」
「同じ趣味?」
こんな形でバーニィが加わってくるとはこの場の誰もが予想していなかった。
「別にただ知ってただけだ。それから、趣味って訳じゃねえ」
平然とバーニィが返した瞬間。
ゴトッ!
四人のテーブルの上に金属質で黒くて格子状の溝が掘られた楕円状の球体が落ちてきた。
「「「伏せろ!」」」
場慣れした三人が同時に叫ぶ。
コロコロコロゴン!
遠くから投げ込まれたソレは勢いでテーブルの上を転がり調味料置きにぶつかって止まった。
ミリィが隣に座っていたラックの襟首を掴み遠くのテーブルの陰に引きずり込み、バーニィとレイもそれから離れて伏せる。
ドバァン!
手榴弾と呼ばれるソレは炸裂し、衝撃と金属片を辺りにまき散らす。
他の客が悲鳴をあげる。
「ちょっと、パイナップルなんて頼んでないわよ」
怒りも露わにミリィがどうしょうもないことを言う。
「んっな事言ってる場合か。敵さん結構居るぞ」
バーニィが店内に乱れ込んで来た敵を睨みつける。
手榴弾を投げたと思われる男、そしてその後ろに揃いのマスクと装備の人間がゾロゾロと六人ほど取り巻きしていた。
先頭の唯一マスクをしていない痩身の男が仰々しく両手を広げて口を開く。
「ハッハハー、お初にお目に掛かるトラブルバスターズの諸君。殺しの楽しめそうな相手で嬉しいよ。冗談のセンスもなかなかだ」
その男の瞳には何人もの人間を望んで殺してきた、そういった狂気のようなものがありありと滲み出ていた。
どうでも、いいがミリィとこの男と作者のギャグセンスは悪いようだ。
「人の食事の邪魔しやがって、てめぇ何者だ?」
「俺か?俺様はザイード、傭兵だよ。お前達が雇い主には面倒な事する可能性があるんでね殺しに来た」
ザイードとバーニィが睨み合う。
「その雇い主っていうのを教えてくれると有り難いんだが?」
「言うと思うか?」
「それもそうだな」
「お前達は俺に狩られればいい。それだけの話だ」
「そう簡単にはいかねぇぞ」
二人の殺意が周りにも伝わる程に増大していく。
そんな、緊迫した場にそぐわない乱入者が現れる