トラブルバスターズ01[一章]-2
「…バーニィがうるさくしたのが全面的に悪かったという事で」
そう言いながらミリィは低重力特有の宙を舞うような動きでバーニィとは反対側のソファーに腰掛ける。
だからといって割れる程の勢いでマグカップを投げつけて良いのかとバーニィが言おうとした時に新たな声が割り込んできた。
「二十分後に減速を開始する」
冷えた鉄の様に冷たい感じのする男の声がスピーカーから流れる。
「こんな部屋で制動かけられたら大変。さぁ、艦橋(ブリッジ)に行くわよ。」
そう言ってミリィは席を立ち扉へ向かう。
「了解了解」
そして二人は最後のクルーが待つ艦橋(ブリッジ)へ向かった。
彼ら三人はとある会社に属している。
今、人類は太陽系外にその版図を広げて2030年が経ち、もっと遠い人工物は地球から1000光年程も彼方にある。
地球上の国家の統一が出来ていなかった上に他惑星にまで移住先を広げ、さらに独立を宣言する移民星まで出てきてしまっては、2030年経ったといえ法整備が追い付けなかった事も仕方ない事だった。
あらゆる国籍、宗教、思想の人々が行き交う宇宙でのトラブルは公的機関による法的な解決は事実上不可能になっていたし。
何より、どこにでも悪党は潜り込む。
広がり続ける問題を解決していく民間の会社、問題解決業(トラブルシューター)という業種が大盛況を迎えていた。
しかし、彼女達とそれを取り巻く人々は、時には話し合いや探偵のような職もこなさなければならない問題解決業(トラブルシューター)は合っていなかった。
そこで、彼女達は新しい職業を考えた。それは傭兵のような純粋な戦闘の代理業。しかし、傭兵とは違い立場や力の弱い一般人に襲いかかる悪を徹底的に叩く正義の職業。事件を根底から破壊する、事件破壊業(トラブルバスターズ)を。
三人が仕事の為に乗っている宇宙航行船の名は[ロック]と名付けられている。
宇宙航行船としては大型な全長320mにもなる[ロック]の艦橋(ブリッジ)、三人はそれぞれのコントロールパネルやレバーに囲まれた座席に着いていた。
ブリッジ前方を見回せるようにに設置された窓からは惑星サイズの人工的な金属球が見えていた。
その造形はスター〇ォーズ好きなら間違いなくデス・〇ターと言うに違いないだろう。
「あれが今回の仕事場か?」
バーニィが横と後ろの二人に話しかける。
「あぁ、ダイソン球型植民惑星スキュラに間違いない」
先程のスピーカーと同じ声がバーニィの横で答える。
「レイ、[シルフィード]の降下許可取れてる?」
ミリィの後ろからスピーカーの声の主、レイに問いかける。
「つい先ほど下りた」
ミリィの席からはレイとバーニィの後頭部が見えるが、レイの長い藍色の髪が揺れもしない程に真っ直ぐ前を見たまま答える。
「バーニィ、車の準備は完璧?」
「この上なく完璧だ」
こちらは、レイとは逆に身を捻ってミリィの目を見て答えた。
「このまま[ロック]を衛星軌道上に固定。軌道船[シルフィード]で降りるわよ」
「「了解」」