教師×生徒=trouble-8
「はぁ…」
余韻が後引いた。
話す気力もない。
唇がぽってりと熱い。
崚に助けられて立ち上がる。
しっかりしろ!脚!
しっかりしろ!指!
しっかりしろ!声!
しっかりしろ!頭!
しっかりしろ!自分!
スーツを整えて、乱れたシニヨンを解く。
惚けたように梓を見つめる崚。
「綺麗だな…先生…」
ちらっと振り向いて、手を差し出す。
「眼鏡」
ふっと崚が微笑んで、掌にのせる。
「よかったよ」
「よくないわ」
眼鏡をかける。
「先生、どうして眼鏡をかけるのさ?」
「この顔が厄介事を呼び寄せるからよ」
「おっ、気が合うなぁ」
「ふん、はた迷惑だわ」
遠くでチャイムが鳴った。
「もう遅刻だね」
「授業に出るわ」
髪をねじってクリップで留める。
「あなたも教室に戻りなさい」
「わかったよ」
ぎごちなく梓は歩き出す。
がに股ながらも、脚を踏ん張って。
「…M女の件、よろしく。これからは風紀として、まず“好き”から始まる恋愛をしなさいね」
「依代先生ならいいよ」
キッと怒ったように、梓は振り向く。
「対象外っっ!」
透けるような青空の下で、加賀美崚の笑い声が響き渡った―――。