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記憶のきみ
【青春 恋愛小説】

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記憶のきみ12-3

俺は、じゃあな、とだけ言うと、振り返らずに屋上を出た。
俺達はまだ小学生だったし、連絡先をおしえあうなんて洒落たことも思いつかなかった。
本当にこれが最後。
実はとても辛かったけど、最後まで格好つけた。



一ヶ月後、瞬はこっそり悦乃の病室を訪れた。
片手にはシュークリームの入った袋。
『……あー』
第一声が思いつかず、しばらくドアの前でうろうろしていた。
しかし、意を決して勢いよく入る。
『……………』
しかし、そこには誰もいなかった。
『……』
一瞬、よからぬことを考えたが、すぐに冷静になり、ナースステーションで聞いてみた。
どうやら、彼女は少し前に退院したらしかった。

屋上に出て夕日を見つめる。
彼女がどうしているのか、今はもうわからない。
『………はぁ』



すべての手がかりが無くなり、その後は中学に進学したため、悦乃の記憶は段々と薄れていった。


俺は約束を守れなかったんだ。


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