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記憶のきみ
【青春 恋愛小説】

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記憶のきみ10-1

青空と葵が付き合い始めて、一週間が経過した。

灰慈と由貴は、大学近くのコンビニにいた。以前、夏休みに男三人で会議をした場所だ。
「あーあ…なんかもう…だりぃわ」
灰慈はタバコに火をつけ、煙を吐く。
「未成年がタバコなんか吸うんじゃないの!」
由貴は灰慈からタバコを取り上げた。
「………由貴ちゃんよ、俺はな…また自分のコンプレックスに負けてん」
「……」
「もうな、あかんねん」
灰慈は再びタバコに火をつけた。
「そんなの…あたしだって…」
「………」
「灰慈くん、きみ、葵と青空くんが付き合うなんて思ってた?」
「思ってたらこんな自暴自棄になってへんて。あまりに衝撃的過ぎや」
もちろん二人は、付き合うまでの経緯を聞いている。
「あたしだってどうしたらいいかなんてわかんないよ…」
「俺ら似たもん同士やな」
灰慈はケラケラ笑った。
「は?一緒にしないでくれる?」
「えぇっ!」
由貴の冷たい切り返しに、さすがの灰慈も驚き、そして落ち込んだ。
「……じゃあ、講義あるからまたね」
「……あい」
由貴は何事もなかったかのように振り返った。
「………はぁ」
灰慈は、丁寧に吸い殻をケータイ灰皿に入れると、立ち上がった。
「………灰慈?」
なんとなく聞き覚えのある声が、灰慈の耳に届いた。
とっさに振り返ると、目の前には……
「……おまえ」





「灰慈がここ最近ずっと講義に出てないらしいんだけど。なにか知らない?」
夜、いつもの“武士道”で、瞬と青空は話していた。
『……そういや見ないな』
「そっか」
『どうせなら今呼んでみるか』
瞬はケータイを取り出すと灰慈に電話をかけた。

プルルルルル……

『………とらねぇな』
コールが延々と続き、半ば諦めかけた頃に灰慈は電話を取った。
ガタガタッという雑音が入り、とっさに耳を離す。
「おー瞬、久し振りやな」
『おー、じゃねぇよ。お前なにやってんの?大学来てねぇんだって?』
「あー、行ってねぇわ」
『まぁ、話は会ってしようぜ。今から武士道に来いよ』
しかし、なぜか灰慈はなかなか返答しない。
「………すまん、行かれへんわ」
『何だよ、めずらしいな』
「そうやな…なら二人で俺んちに来ぃーひん?」
『……まぁ、いいけど、じゃあ今から行く』
「あいよー待ってるで」
電話を切ると、青空が聞いてくる。
「なんだって?」
『なんかよくわかんねぇけど来れないらしい』
「なんでだろ」
『それで家に来いって。今から行くぞ』
「え…あ…うん」
青空は首を傾げながら、酒やつまみの料金を払った。
瞬も払うと、早足で店を出る。
『タクシー拾ったが早いな』
瞬がそう言い振り返ると、青空が爽やかな笑顔でガッツポーズをしていた。
背後にはすでにタクシーが止まっている。
『相変わらずやるな』
「まあね」
二人は素早く乗り込むと、住所を伝えた。運転手は即座に車を走らせる。
『なにやってんだろうな…灰慈の野郎』
「うん」


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