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カーテンと机とつぶれた気持ち
【青春 恋愛小説】

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最大級のエゴ-1

サッちゃんが泣いてる。

泣かしたのは‥俺。



違うんだ。そんな顔をさせたかった訳じゃない。

頼ってほしかったんだ。

どんなカタチであっても君に関わっていたかったんだ。

だから泣かないで‥。



君が悲しいのは俺も悲しい‥。



気が付けば俺は泣いていた。目の前で君がこちらに歩み寄ってくる。


俺を慰めてくれてるの?


肩の震えは彼女の小さな美しい手によって温められる。

溢れる想いはとどまることを知らないらしい。
そのまま彼女を抱き締めてしばらく泣いた。


それから二人で手を繋いで帰った。

君と手を繋ぐのはこれが最初で最後だろう。


二人とも何も喋らなかったが、きっと思っていることは同じ。


この手を離したら元の関係に戻る。


だから今この瞬間だけ君は俺のことを想ってて。
これまでのこともこれからのことも周りのことも総て忘れて俺だけのことを考えててよ‥。

手を繋いでるイマだけは‥‥。


サッちゃんを送って一人で歩く帰り道は、とても寂しくて、味気ない。
でも妙にすっきりしている気分。なんて言えばいいんだろう。
季節はずれだけど夏の夕立のあとみたいな。湿気混じりでコンクリートの匂いがして、どこかすっきりした夕日を見たときみたい。


俺は人に語れるほどの大恋愛をした訳じゃない。
他人からすれば、ただ失恋しただけだろうと笑い飛ばされるかもしれない。
それでもいい。俺は初めて心から人を愛することができたんだ。
自分を見失うくらい人を好きになって、すごく理不尽な嫉妬をして、精一杯の想いをぶつけて、子供みたいに泣きじゃくって、人のぬくもりを知った。



家に帰ってからもご飯は喉を通らず、ずっと部屋にいた。
別にフラれて悲しくて食欲がない訳じゃない。
この今の虚無感と充実感を噛み締めていたかった。
この先の人生で何があるか分からないけど、おそらくこれほどまでに誰かを好きになることはないと思う。そんなときに飯なんか食っていられない。
ただ、ずっとさっきまで君のぬくもりを感じていた右手だけを見つめていた。


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