僕とお姉様〜嘘をつく〜-4
家の前に着くと同時に荷物を持って車を降りた。
「山田!」
「…」
最後までシカトし続けた僕の背中にお姉様の声が響く。
「あの、…ごめん…」
今までに聞いた事のないくらい弱い声。でもそんなの今の僕には関係ない。
何がごめんだ。僕に謝るな。僕は…
「…あんたの彼氏役なんか、二度としねぇ」
自分の気持ちを示すように助手席のドアを力任せに閉めた。
貰った野菜を持って玄関から一直線の台所に入ると、ひばりちゃんが一人椅子に腰掛けていた。
「…ただいま」
声を掛けるとはっとした様子で僕を見て、その顔がみるみる泣き顔に変わった。
「強君…っ」
絞り出すように僕を呼ぶから慌てて側に行くと、座った状態でまるでしがみつくように僕のお腹に顔をうずめて泣いてる。
ただ事じゃないのはすぐに分かった。長い間幼なじみをしていたけど、この子がこんな風に感情をさらけ出したのは初めて。
その時カチャンと玄関の開く音がした。お姉様が帰ってきたのがこの位置から横目で確認できる。
お姉様がこの光景を見てるのに僕は気がついた。
この時の気持ちは強がりのような意地悪のようなどちらも違うような…、とにかくひばりちゃんの事は全く考えてなかった。
見られてるのを分かってて、僕はギュッとひばりちゃんを抱き締めた。
そんな事をしても意味なんかない。でも僕は知って欲しかった。
僕にもこんな面があるんだと。
僕を頼るのはお姉様だけじゃないんだと。
嗚咽しながら泣き続けるひばりちゃん。階段を駆け上がっていくお姉様。意地だけで行動する僕。
この台所で4人で鍋を囲んだほんの数日前がすごく懐かしい。
僕らのバランスが少しずつ崩れていくのを感じていた。