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僕とお姉様
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僕とお姉様〜嘘をつく〜-3

「彼氏できたら連れて来いって言ったのお父さんでしょ!?何で文句言われないといけないわけ!?」
「自己紹介くらい彼にさせればいいだろう。それとも話されたら困ることでもあるのか?」
「そんなのあるわけないでしょ!!あたしはこの人と付き合ってるの、彼氏がいるならお見合いしなくていいんでしょ!?」

…なるほどね。
それが僕に着いて来てと言った理由か。
見合いを断る口実に強引に彼氏役に仕立て上げてついでにまともに生活していると家族にアピールして…、たまたま近くに僕がいたから調度いいって思ったんだろうな。
役に立てたなんて前向きな気持ちはこれっぽっちも浮かばない。
いいように使われた気分だ。
歳も職業も全部嘘で紹介されて、それはもう僕がここに来る事はないって前提みたいじゃないか。
意識されてないのも、当然お姉様に悪気がないのも分かってる。
だけど…

結局すぐに帰ることになった。あの様子では当たり前だし、僕も早く消えてしまいたかった。
車に向かう途中、

「山田君」

僕だけがお母さんに声を掛けられた。お姉様は話したくないのか、一人でさっさと車に乗り込んでいる。

「これ、うちで採れた野菜。こんな物しかないけど良かったら持って行ってちょうだい」

渡されたのは買い物袋一杯の冬野菜。白菜やネギ、人参大根等々。

「…ありがとうございます」

僕はここに来て初めて声を出した。

「ごめんなさいね、変な雰囲気にさせちゃって」
「いえ、そんな…」
「お父さんと朝子は昔からあんななの。だから気にしないでちょうだい」
「はぁ…」
「お見合いって言っても形式だけで親戚付き合いの一つみたいな物なのに、わざわざ代役なんか立てて…」
「えっ」

お母さんは全てを見透かすように更に続けた。

「朝子は昔から嘘のつけない子でね、変な事に付き合わせちゃってごめんなさいね」
「…」

終始挙動不審だった僕とやたら必死なお姉様を見れば怪しいのは一目瞭然なのかもしれないが、最初から気付かれていたと思うと余計に落ち込む。

「あなた達がどんな関係かは知らないけど、これからも朝子をお願いします」

嘘をついた僕に向かって頭を下げるお母さんに対して申し訳なくて、深くお辞儀をした。
本当はごめんなさいを言いたかったのに、口が震えて何も言葉にならなかった。


車中僕は口を開かなかった。左肘を付いて外の景色を見てるフリをしている。
正確に言うと、お姉様を見たくないから。
自分が惨めになりそうで嫌だった。
長い沈黙が破られたのは家まであと数分の所まで来た頃。

「…山田?」
「…」
「着いて来てくれてありがと」
「…」
「ごめんねー、うちのお父さん感じ悪くて。いつもあんなんなの、あたし昔から喧嘩ばっかりしてて…」
「…」

駄目だ。
イライラする。
人の気も知らないで、親の気持ちも考えないで。
軽い気持ちだったんだ、それくらい分かってる。とりあえず親を納得させる為に知り合いにカモフラージュを頼むのはよく聞く話。
好きな人じゃなかったら良かったけど、僕は、この人が好きだから…

だからこんなにも悲しいんだ。


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